先週の為替振り返り:下落幅はリーマン・ショック超えの過去最大    

 静かな12月相場になるはずが大波乱の相場となりました。

 欧米の投資家がクリスマス休暇もゆっくりと過ごせないほどの大荒れ相場となっています。

 先週12月21日の(金)の時点で、NYダウ平均株価の週間の下落率は6.9%。リーマン・ショック直後の2008年10月以来、約10年ぶりの大きさとなりました。

 下落率は10年ぶりの大きさですが、1カ月の下落幅は、記録を更新しました。21日までの12月のNYダウの下げ幅は3,093ドルと、単月では過去最大の下落幅となっています。これはリーマン・ショック直後の2008年10月の下落幅(1,525ドル)の2倍以上の大きさです。

 さらに記録面から見ると、月間の下落率は12.1%となり、12月としては大恐慌時の1931年(17.0%)に次ぐ過去2番目の大きさとなっています。

 株の大幅安と米長期金利の低下からドル/円もゆっくりと売られ、110円近辺まで下落してきましたが、米株の方は記録的な下落幅、下落率となっていることから、早晩、この激震はドル/円市場にも波及してくる可能性がありそうです。

 

複合要因もあるが、株安の決め手はFOMC

 週明けの24日も米株はさらに下落しています。

 この株安の理由として、米政府機関の一部閉鎖やトランプ米大統領がツイッターでFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策を批判したこと、マティス米国防長官の辞任によるトランプ政権の信認低下があります。加えて、ムニューシン米財務長官が市場の動揺を抑えようと、米金融機関大手6社と電話会談したことが異例の対応と受け止められ、市場に何か問題があるのではないかと、逆に疑念をもたらしたことなどが挙げられています。

 しかし、この株式市場の大変調のきっかけは、やはり先週のFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果によるものと思われます。

 FOMCでは、予想通り今年4回目の利上げ(0.25%)が決定され、政策金利は2.25~2.50%となりました。また、金利見通しでは、2019年の利上げ回数を前回の3回から2回に、2020年は前回通り1回、2021年は前回通りゼロ回となっています。そして、2019年の成長率(GDP:国内総生産)見通しは、前回の2.5%から2.3%の下方修正となっています。

 FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は、利上げペースの減速と成長見通しの下方修正について「海外経済が鈍化して、金融環境も厳しくなった」との認識を表明。2019年の利上げ回数は経済環境の変化によって「想定していた3回ではなく、2回の可能性が強い」と説明しています。

 パウエル氏は利上げペースの減速を宣言しましたが、景気後退を警戒しているマーケットでは、予想よりもハト派ではなかったとみました。マーケットは、景気の見方は強気で、金融政策についてはよりハト派的な姿勢をFRBに期待していました。しかし、実際にはFRBの景気の見方はより慎重になり、金融政策はこれまでの政策と変わらないと受け止めました。このギャップがマーケットを落胆させ、株の売りを誘ったようです。

 さらに、FRBが量的緩和で買い入れた資産の圧縮について見直すのではないかとの期待に対して、パウエル氏は「バランスシートの縮小による影響は小さい。正常化を変更するつもりはない」と一蹴。これにより「タカ派色」をまだ残しているとの見方が市場に広がり、売りに拍車をかけました。

 この株下落の反応を見たニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は21日、「FRBは市場の声を注意深く聞いている。現時点の経済見通しも今後見直すかもしれない」とテレビ出演で発言。また「利上げを続けると約束したわけではない」と釈明しました。

 この発言を受けて、NYダウは400ドル近く上昇する場面もありましたが、上昇は長続きせず、結局414ドル安でその日の取引を終えました。