平成31年税制改正大綱が示されたが、NISA等の規制緩和には至らず
例年、12月15日前後に与党の税制改正大綱が示されますが、今年は14日(15日が土曜日だった)に示され、自民党のホームページに情報開示されています。(※参考1)
残念ながらNISA(少額投資非課税制度)の恒久化や、iDeCo(個人型確定拠出年金)の限度額拡充は明記されませんでした。投資関連では、成年年齢が18歳になるため、1月1日時点で18歳ならNISA口座が開設できる(今までは20歳)という改正が大きなポイントのひとつでしょう。
しかし、「老後の生活などに備える資産形成を支援する公平な制度のあり方」として基本的な考え方を示しているページがあり、今後の年金改革の動向を踏まえつつ公的年金等控除の見直しも検討されるページもあります。
今回は「2019年あるいは2020年代」をにらんで、年金や投資の制度がどう変わるか、ちょっとした未来予測をしてみたいと思います。
2019年以降「公的年金」はどう動くか? 受給開始年齢の一律引き上げは行わない方向か
2019年は、年金制度改正の議論が進む可能性があります。なぜかと言うと2019年の春から夏にかけて、「財政検証結果」が公表されるからです。2014年に公開されてから5年に一度の情報開示ですが、これを踏まえていくつかの制度改正の可能性が動き出します。
現在、可能性が高まっていると思われるのは、70歳以降に受け取り開始年齢を遅らせるという選択肢の導入です。現状では60歳~70歳までが受け取り開始年齢となっており、65歳時点を100とすると、70(つまりマイナス30%)から142(つまりプラス42%)までの年金額が増減します。
受け取りを開始すると、その年金水準を死ぬまでもらい続けることになり、平均余命を勘案すると遅く受け取ったほうが有利になりますが、心理的にはなかなか難しく感じます。また、今まで60代前半に一度少額の年金を受け始めている人が、65歳からいきなりゼロ円としにくいことから(こちらも心理的ハードルといえます)、利用率が低かったという背景があります。こちらについては、年金定期便の案内に情報を盛り込むことが予定されています。
年金改正の議論では、一律の受給開始年齢引き上げ(先ほどの数字でいえば65歳の水準100を68歳にずらす)のアプローチではなく、70歳以降の繰り下げ受給を認める(60~75歳までの間で受け取るようにする)方向感です。首相官邸に置かれている未来投資会議の中間整理においても、受給開始年齢引き上げは行わないことが論点整理されています。(※参考2)
今まではどんなに働ける人であっても、70歳以上に繰り下げができなかったわけですが、これを可能にすれば、遅く受け始めるほど142以上の増額になるでしょう。
もちろん、70歳以降まで年金を一切受け取らなかった場合、そこまで働ける必要がありますが、こちらも高齢社会対策の関係で、雇用確保措置の整備が見込まれています。すでに定年を65歳に繰り上げる企業も増えており(現状で16%ほどあり毎年増加傾向)、65歳まで正社員待遇、70歳まで再雇用に切り替わっていく流れにあるといえます。
日本では、生産年齢人口の減少が深刻なので、私たちが想像するより早く、長く働ける環境が整うのではないでしょうか。できれば、公的年金の受け取り開始年齢を働くことで遅らせ、年金の増額を勝ち取りたいところです。(※参考3)