2019年は円高方向に圧力か
話が横にそれましたが、今年のレンジは変動相場制に移行して以来の狭いレンジでしたが、参考までにこの10年間の各年のレンジ(年間値幅)を紹介します。やはり、あまり動いていません。
直近10年のドル/円年間変動幅
上記の表から、この10年間のうち、5回が10~11円で動いていることが分かります。
一方、大きく変動した年は、2013年(18.88円)、2014年(21.10円)、2016年(22.70円)。2013年と2014年はアベノミクスによる日銀の黒田東彦総裁の超金融緩和によって大きく円安に動きました。
2016年はBrexit (ブレグジット:英国のEU[欧州連合]離脱)とトランプ氏の米国大統領選挙勝利によって、ドル/円は上下に大きく振れた年でした。これらの特殊要因の年を除くと、ここ最近の年間の変動幅は10~15円となります。
そうだとすると、来年2019年の変動幅も特殊要因が発生しない限り、10~15円になる可能性が高いことが想定されます。現時点ではBrexitや米国大統領選挙のように事前に分かる特殊要因はありません。しいて挙げれば、米中貿易交渉90日間猶予の期限が2月末にありますが、Brexitや米国大統領選挙のように事前に予想が全くつかず、その日のうちに白黒がはっきりするイベントではありません。90日間のうちに交渉経過が伝わり、徐々にマーケットに織り込まれていく可能性があります。
今年は、米国景気が好調で数回の利上げがあり、米長期金利も上昇しました。それにもかかわらず昨年2017年の高値118.60円を超えられず、115円にさえ届くことができていません。来年は米景気の鈍化が予想されており、利上げペースも鈍化してくるという見方が高まっていることを考えれば、円安方向よりも円高方向に圧力がかかってきそうです。今年と同じように105~115円のレンジの中で円高バイアスが強まるシナリオ、あるいは15円の変動幅であれば、100~115円のレンジの中で円高バイアスが強まるシナリオが想定されます。
もちろん、異なったシナリオも考えられます。今年のドル高要因にブレーキをかけていた米中貿易摩擦が交渉合意の方向に動き、米中双方の景気にプラスに働き、FRBの利上げペースも鈍化しないというシナリオです。この場合、10円の変動幅であれば110~120のレンジに、15円であれば105~120円もしくは110~125円のレンジとなります。レンジは5円刻みでなくても構いません。例えば108~118円、あるいは108~123円というレンジも考えられます。