本日の注目通貨
ドル/円:「事実」とマーケットの「反応」は違う
木曜日のマーケットはドル安が続行。ドル/円の高値は113.65円で、海外市場で113.19円まで下落。FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ判断の指標として重要視する個人消費支出コアデフレータが予想を下回ったこともドル売り材料。ただ112円割れは回避してやや戻し、終値は113.49円でした。
ドル売りが強まったのは、水曜日のパウエルFRB議長のスピーチを聞いたマーケットが米利上げ休止の可能性を意識するようになったからです。ただし、パウエル議長が述べた「中立金利」は事実その通りであって決して弱気に変わったわけではない、というのが大半のエコノミストの意見。もっとも、株価が反発して、ドル高も調整されたのでFRBにとっては結果オーライだったかもしれません。
マーケットはG20に心を奪われ、FRBの金融政策の話題はいったんおあずけ状態。今週末のG20では、併せて行われるトランプ大統領と中国の習近平国家主席との直接会談に世界の注目が集まっています。貿易問題については、中国が大幅に譲歩しない限り良くても「対話継続」の確認程度だろうという予想が多いようです。
注意しなくてはいけないのは、たとえ話し合いが上手くいってたとしても、関税が撤廃されることはありえず、来年1月からの中国輸入品約約22兆円に対する追加関税の上乗せ税率を25%に引き上げる方針は変わらないということです。ただ、マーケットの反応はエコノミストとは同じではありません。全製品25%という最悪のケースが避けられた、ということでリスクオンに動くことも予想されます。
トランプ大統領はG20でプーチン大統領との会談をキャンセルしたと伝えられています。ロシアはウクライナと全面戦争に発展する可能性があり、欧米は追加制裁を検討しています。一方でロシアは原油市場に強い発言力を持っていて、来週のOPEC(石油輸出国機構)総会を前に原油価格の動向も気になります。
英国のメイ首相は、自らが提案する離脱条件の議会採決を来月に控えて支持を集めたいとの思いがありますが、トランプ大統領は、「EU(欧州連合)にとって有利すぎる」と辛らつな批判しているので注意。またトルコのエルドアン大統領が米国との関係改善のアピールでトルコリラ買いに結びつく可能性があります。さまざまな思惑が入り混じるG20。月曜日のマーケットは注意が必要です。