株価下落でナスダック相場の割高感は後退?

 10月以降の株価下落で、FAANG、GAFA、MANTと呼ばれる大手IT企業(時価総額上位100社)を中心とするナスダック100指数の12カ月先予想EPS(1株当たり利益)に基づく予想PER(株価収益率)は、2016年初以来の低水準である17.5倍に低下(図表2)。同様に、米国株式全体の動きを示すS&P500指数の予想PERも15.4倍まで低下しました(11月23日)。

 前述のように、一部ファンド筋による「モメンタム株(高PER株)売り」がかさんだことによる需給悪化が主因とされます。

 一方で、米国を中心とする世界のAIoT(AI+IoT=人工知能+産業のインターネット化)は進展しており、半導体関連の短期的な需給変動(在庫調整)を乗り越えた「デジタル革命」は全産業をリードし続けると考えられます。

 例えば、「CASE(Connectivity、Autonomous、Shared、Electric)」の略称で知られる自動車業界の構造変化では、AIoTの進展が自動車の「インターネットとの接続」「自動運転」「シェア・サービス」「電動」に領域を広げています。

 図表3は、ナスダック100指数ベースの暦年EPS(1株当たり利益)とS&P500指数の暦年EPSについて、実績値(2017年まで)と市場予想平均(2018~2020年)を示したものです。

 ナスダック100指数の利益成長ペースはS&P500指数を大きく上回り、その成長ペースが加速していることが分かります。今後もクラウドコンピューティング、ビッグデータ、AI、IoT、ロボティクス、サイバーセキュリティー、5Gなどの分野での需要拡大がIT関連株の利益を成長させていくとみられます。

図表2:ナスダック100の予想PERは2016年来の水準に低下

注:予想PER(株価収益率)=株価指数ベースの12カ月先予想EPS(市場予想平均)による
出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年11月23日)

図表3:ナスダック100の利益成長期待は相対的に高い

注:2018年から2020年までの予想EPS=株価指数ベースのアナリスト予想平均(暦年予想)
出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年11月23日)