【今日のまとめ】
- エジプト経済は苦境に立っている
- 去年11月の変動相場制移行でエジプト・ポンドは半値に
- 燃料、食品に対する補助金カットで狂乱インフレに
- IMFからの緊急融資の条件として、それらを受け容れざるを得なかった
- 近隣のエジプト支援国の台所事情の悪化も遠因
- 長期で見れば補助金体質からの脱却は好ましい
エジプト経済が苦境に立っています
エジプトは2016年11月にエジプト・ポンドを変動相場制に移行しました。それまで1ドル8.8エジプト・ポンドに固定されていたレートはすぐに半値に暴落しました。
次にエジプト政府は第二次世界大戦直後からずっと続いてきた、燃料、食品に対する補助金を削減する方針を打ち出しました。市場実勢価格よりはるかに安い水準で提供されていた燃料や食品の価格が水準訂正したことで、インフレが荒れ狂っています。
エジプトが今回、これらの一連のショック療法を打ち出した理由は、IMF(国際通貨基金)が120億ドルの緊急融資の条件として、これらのことを同国に義務付けたからです。
エジプト政府の予算は慢性的に赤字体質でした。
しかしエジプトが何とかやりくりできた理由は、天然ガスの輸出で潤うカタールから財政支援を受けていたためです。
2011年に「アラブの春」が起き、カイロの市民が革命を起こすと、エジプトにとって重要な外貨獲得の機会である海外からの観光客が減りました。
その後も同国の経常収支は悪化の一途を辿っています。
2013年7月にアブデル・ファタハ・アル・シシが大統領になると、同国はそれまでのカタールではなく、サウジアラビアやアラブ首長国連合と接近し、これらの国々から経済支援を受けます。
しかし、2014年下半期以降の原油価格の急落で、これらの国々からの経済支援は細っています。
今回、エジプトが、市民の不満の爆発というリスクを冒してまで、IMFの厳しい条件を呑む決断をしたのは、そのような事情によります。
エジプトのGDPは、「アラブの春」当時のスランプから抜け出したかのように見えたのですが、今回の緊縮措置で、再び景気が暗転するリスクが高まっています。
失業率も、高止まりしたままです。
エジプトの国民は、物価高騰に反対し、デモ行進したいところですが、「治安が乱れている」という印象を与えてしまうと、海外からの観光客の足が遠のくので、我慢している状況です。
なお長期的観点に立てば、エジプトが補助金体質から抜け出すことは歓迎すべきことであり、ここを乗り切ることが出来れば、エジプト経済はよい方向へ向かうという風にも考えることができます。