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10月10日は特別な日?行動経済学、最初の一歩
鈴木 卓実
数字でわかる。経済ことはじめ
元日銀マンが、世間で話題の数字や金融の分析データなどを織り交ぜながら、数字でわかる「経済ことはじめ」を教えます。 マクロな視点から日本人の経済・金融のリテラシー向上を目指して、初…

10月10日は特別な日?行動経済学、最初の一歩

2018/10/10
10月10日は何の日でしょう?
経済学と心理学が融合した学問である「行動経済学」
印象的な数字には特別な意味を見出してしまいがち
金融市場のプロの投資家の行動について
理論からは乖離しているように見える現象
年末が近づくと、近年は年末高を期待する声が多くなる傾向に
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突然ですがクイズです。10月10日は何の日でしょう?

 そのように質問されると、トウシルで記事を読まれている多くの方は「体育の日」が真っ先に思いつくのではないでしょうか? でも、体育の日がハッピーマンデーにより、2000年に10月第2月曜日に移動してからもう18年になります。10月10日が体育の日ではなくなってから随分経つのですが、一度、記憶が固定してしまうと、次に新しい情報が入って来ても、なかなか修正できないものです。そして、真っ先に思いついた内容で答えを出し、意思決定をする傾向があります。

経済学と心理学が融合した学問である「行動経済学」

 こうした思考のショートカットについて、行動経済学では「ヒューリスティック」と呼ばれています。何やら難しい言葉ですが、単純に言えば、経験や記憶による直感で判断するということです。直感で判断するというと頭を使っていないような良くないイメージがあるかもしれませんが、進化の過程で生存のためには重要だったとする説があります。原始社会を生き残ることを考えると、思いもせず茂みが揺れたら、サーベルタイガーのような大型肉食獣に襲われるのかもしれませんし、イノシシのような動物に突進されるかもしれません。何が出てくるのだろうなどと考えるよりも、闘争・逃走に備えて反射的に体を動かせるようにしなくてはなりません。

 現代では野生動物に襲われることはないのですが、遺伝子レベルで刷り込まれてしまったのか、じっくり考える時間があっても、つい、思考をショートカットしてしまいます。

印象的な数字には特別な意味を見出してしまいがち

 数字で言えば、ゾロ目は代表格です。サイコロを2回振って、1回目に6が出たとすると、2回目に6が出る確率も1が出る確率も他のそれぞれの数字が出る確率も6分の1なのですが、6・6という印象的な数字がそう簡単に出る訳がないと錯覚をしてしまいます。冷静に考えればそのような訳はないのですし、むしろ、サイコロが歪んでいないという確証がないのであれば、1回目で6が出ている以上、2回目に6が出る確率を6分の1未満と決めつける根拠は少ないと思うのですが…。

 桁が多くなるとゾロ目や並び数字、キリ番はもっと特別な数字に見えます。たとえば、宝くじを買って、数字の並びが「11111」や「12345」、「10000」だったら絶対に当たりっこないと思ってしまいます。「63752」の方が当たりやすそうです。でも、宝くじが「00000」から「99999」までの10万通りあるなら、どの数字が当たる確率も等しく10万分の1です。

 お札にはアルファベットと数字が印字されていて、記番号と呼ばれています。コイン商やオークションサイトなどでゾロ目や12345、キリ番といった記番号のお札が高値で取引されているようですが、どの記番号も同じ確率で生じるので不思議と言えば不思議な話です。

 では、こうした確率的には同じなのに違う値段になることは全くの不合理なのでしょうか? 実際に、ゾロ目などの印象的な記番号が印字されているお札がATMで出てくれば、それをコイン商に持ち込むとお札の額面よりも高値で買い取ってくれるため利益が出ます(お札の状態にもよりますが)。なぜ、コイン商が買い取ってくれるのかと言えば、コイン商自身がありがたがっているかは別にして、ゾロ目等の印象的な記番号に価値を見出して高値で買い取ってくれるお客さんがいると思っているからです。高値で買い取ったお客さんの中には、転売で利益を得られるという資産価値を見込む方もいるでしょう。

『雇用・利子および貨幣の一般理論』で有名な経済学の巨匠ケインズは、金融市場でのこうした心理的な読み合いを美人投票に例えました。その内容を大まかにまとめると、以下のようになります。

金融市場のプロの投資家の行動について

 金融市場のプロの投資家の行動は、新聞で行われる美人投票に似ている。100枚の写真の中から最も美人だと思う人に投票してもらい、最も票を集めた美人に投票した人達が商品をもらえるような投票だとすると、プロの投資家は自分の好みの美人を選ぶわけではない。他の多くの人が美人だと思うであろう人に投票し、他の多くの人も、その他の多くの人が美人だと思うであろう人を予想して投票する。そのような予想の中で票をもっとも集めそうな美人に投票する。

 何やら複雑ですが、極論すれば、自分の好みではなく、参加者の心理を読んで勝ちそうなところに掛けるということになります。自分の価値観だけではなく、まさに「相場を読む」ということにも繋がるでしょう。

理論からは乖離しているように見える現象

 相場の格言やアノマリーと言われる、理論からは乖離しているように見える現象も心理的な要因を加味すると、頭から全否定することはできないかもしれません。相場の格言には『申酉(さるとり)騒ぐ』という言葉があります。干支は12年周期、アメリカ合衆国の大統領選挙は4年周期で、申年の年は大統領選挙と重なっています。選挙は蓋を開けてみるまでわからない水物、まして米国の大統領の方針は米国だけでなく日本や世界経済にも影響を与えます。後で相場の動きを分析してみるとたいしたことはなくても、大統領選挙というイベントと関連づけられて記憶されると、ヒューリスティックが働いて、申年は相場が荒れる年とすぐに思ってしまい、そう思う人が多いと多くの人が予想すると、自己実現的な相場の荒れに繋がることもありえます。

年末が近づくと、近年は年末高を期待する声が多くなる傾向に

 2012年11月16日に民主党が衆議院を解散したことで、自民党の政権復帰と大規模な金融緩和が見込まれていたこと、その後、安倍政権下で日本銀行の異次元緩和が続いていることから、長らく日本株は上昇トレンドにありました。足許では、米中貿易戦争や米国の利上げなどがあり、10月1日に公表された日銀短観の業況判断D.I.も、景気との連動性が高いと言われている大企業製造業が19ポイントと前回よりも2ポイント悪化しています。このような状況下で、今年も年末高となるのか、注目が集まると思います。

 ギャンブルも株の短期売買も、「自分は負けない」、「自分なら上手くやれる」という楽観が根底にありそうです。行動経済学では「正常性バイアス」と呼ばれていて、悲観的な予想は頭の隅に追いやってしまうクセがあります。狩猟に行って仲間が大怪我を負っても、次は自分が怪我をする番かもと皆が萎縮してしまっては食料が手に入らなくなり、集落ごと全滅してしまうかもしれません。原始時代からのサバイバルの過程でこうした楽観が刷り込まれているようです。

少し引いた視点から、自分の思考のクセをみつめてみませんか?

 執筆に当たり、改めて情報に当たると、自分自身も多くの思い込みがあったことに気づかされます。10月10日が体育の日になったのは、1964年の東京オリンピックの開会式が10月10日だったことに由来しています。私は、その日が開会式に選ばれたのは、統計的に晴れる日が多い特異日だからだと信じ込んでいました。ですが、当時、特異日と言われていたのは10月14日だそうです。10月10日が開会式に選ばれたのは、秋雨が終わる頃、そして当日が土曜日だったから、という説が有力のようです。

 何事にも思い込みやヒューリスティック、思考のバイアスはつきまといます。自分の大切な資産は安易な決断によらず、じっくり落ち着いて検討したいものです。近年、行動経済学はブームと言って良いほど出版ラッシュで、専門書から経済学を全く知らない方向けの入門書まで幅広いラインナップがあります。秋の夜長、じっくりと読書をして自分の思考のクセや負けパターンを振り返って見ると、思わぬ発見があるかもしれませんね。

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