年末が近づくと、近年は年末高を期待する声が多くなる傾向に

 2012年11月16日に民主党が衆議院を解散したことで、自民党の政権復帰と大規模な金融緩和が見込まれていたこと、その後、安倍政権下で日本銀行の異次元緩和が続いていることから、長らく日本株は上昇トレンドにありました。足許では、米中貿易戦争や米国の利上げなどがあり、10月1日に公表された日銀短観の業況判断D.I.も、景気との連動性が高いと言われている大企業製造業が19ポイントと前回よりも2ポイント悪化しています。このような状況下で、今年も年末高となるのか、注目が集まると思います。

 ギャンブルも株の短期売買も、「自分は負けない」、「自分なら上手くやれる」という楽観が根底にありそうです。行動経済学では「正常性バイアス」と呼ばれていて、悲観的な予想は頭の隅に追いやってしまうクセがあります。狩猟に行って仲間が大怪我を負っても、次は自分が怪我をする番かもと皆が萎縮してしまっては食料が手に入らなくなり、集落ごと全滅してしまうかもしれません。原始時代からのサバイバルの過程でこうした楽観が刷り込まれているようです。

少し引いた視点から、自分の思考のクセをみつめてみませんか?

 執筆に当たり、改めて情報に当たると、自分自身も多くの思い込みがあったことに気づかされます。10月10日が体育の日になったのは、1964年の東京オリンピックの開会式が10月10日だったことに由来しています。私は、その日が開会式に選ばれたのは、統計的に晴れる日が多い特異日だからだと信じ込んでいました。ですが、当時、特異日と言われていたのは10月14日だそうです。10月10日が開会式に選ばれたのは、秋雨が終わる頃、そして当日が土曜日だったから、という説が有力のようです。

 何事にも思い込みやヒューリスティック、思考のバイアスはつきまといます。自分の大切な資産は安易な決断によらず、じっくり落ち着いて検討したいものです。近年、行動経済学はブームと言って良いほど出版ラッシュで、専門書から経済学を全く知らない方向けの入門書まで幅広いラインナップがあります。秋の夜長、じっくりと読書をして自分の思考のクセや負けパターンを振り返って見ると、思わぬ発見があるかもしれませんね。