19年に資産の劣化局面入りを予想、大手行より中小行の打撃に
BOCIは本土銀行セクターの資産の質について、「11年下期から続いたサイクルが18年上期に終わった」との認識を示し、19年には新たな資産の劣化局面が到来すると予想している。バランスシート外の資産運用商品に対する規制強化や米中摩擦の激化を受けた輸出企業の採算悪化、地方政府(主に小都市)の過剰債務問題などが理由。18年1-7月時点では、中国企業の債務返済能力は過去5年間の平均値を上回る水準にあり、18年下期にはデット・エクイティー・スワップ(債務の株式化:債権者が債務を免除する代わりに、その企業の株式を取得する手法)の加速が、大手国有企業向け融資の貸し倒れ圧力の軽減に寄与する見込み。従って、年内の信用リスクは限定的ながらも、下期の国内経済の減速が19年の不良債権化リスクの拡大につながる見通しという。
BOCIによると、11年上期-18年上期のサイクルにおいては、企業の債務返済能力は11年にピークに達し、16年初めごろには最低となった。一方、上場銘柄の不良債権比率を見ると、大手行が13年、株式制商業銀行(JSB)および小規模行が11年下期に最も低い数字を示し、16年上期、16年下期には最悪の水準に達した。
過去7年間のサイクルを分析する中で、BOCIは企業の債務返済能力と銀行の不良債権比率のターニングポイントの強い相関関係を指摘。不良債権比率の転換点が、おおむね半年から1年遅れで到来するとした。また、国内景気の減速局面では、JSBや小規模行の敏感度が大手行より高く、逆に景気拡大局面では大手行の敏感度が高いというトレンドを指摘。ただ、これは大手行がより積極的に不良債権処理を進めたためで、一般的には景気減速・拡大の両局面において、小規模行のほうがより感応度が高いと説明した。
18年4-6月には、銀行銘柄の不良債権比率が前期を0.11ポイント上回る1.86%に悪化したが、これは農村商業銀行がより厳しい分類方針を取った影響が大きく、BOCIは実際には横ばいだったとみている。一方、先行指標となる要注意先債権は4-6月も安定的だったが、個別に見ると、上場銘柄の半数以上で同債権比率が前期を上回った。BOCIはこうした点から、18年下期には一段の資産の健全化には期待しにくいとの見方。ただ年内に信用リスクが急激に高まる可能性も低いとみている。
19年に予想される信用リスクの拡大局面では、輸出企業や中小・零細企業、小都市政府の資金調達プラットフォーム向け融資、個人向け融資などの貸し倒れリスクが高まる見込み。BOCIは不動産市況が失速せずに地方政府の支援が続くと想定した上で、「中堅行・小規模行の信用リスクがより大きい」と指摘し、零細企業向け融資、個人向け融資のウエートの大きさを理由に挙げた。ただ、現時点では、銀行セクター全体に対する強気見通しを継続し、カバー銘柄7行すべてに強気の投資判断を付与。中でも中国建設銀行(00939)と中国農業銀行(01288)に強気の見通しを示している。