なぜ金利を上げないのか?

 足元の物価がたいして上がっていないのに杞憂だと思われるかもしれませんが、日銀当座預金に大量のお金が眠っていると、制御できないインフレにおちいるリスクがあります。地政学的リスクなどで原油価格などが急騰、輸入品の価格を皮切りに思わぬ物価上昇がないとは言い切れません。円安も輸入品の価格の上昇要因です。

 その際、利子の付かない日銀当座預金にお金を預けているだけでは、事実上、目減りしてしまうので、銀行などは日銀当座預金を取り崩し、少しでも利子収入を得ようと積極的にお金を貸し出し始めます。世の中に流れるお金が増えればインフレになりますし、何しろ、日銀当座預金の残高は約400兆円と巨額です。理論的には、日銀当座預金に利子を付ける(付利をする)ことで、お金が急に市中に流れ出さないよう閉じ込めることはできますが、現実には、日銀当座預金にどの程度の金利を付ければ良いのか、日本銀行の財務懸念は生じないのか、といった難しい問題が生じることになります。異次元緩和という社会実験の結果、日本銀行は極めて困難な状況に追い込まれているのが現状です。

 今後の連載でも折にふれて、日本銀行の金融政策を採り上げたいと思います。

◎筆者より

はじめまして。今月から記事を執筆します、鈴木卓実です。日本銀行を退職し、たくみ総合研究所を設立。経済の家庭教師やセミナーなど、シンクタンクのようなことをしております。経済、金融のリテラシー向上に興味があります。経済だけではなくアニメも好きで、ガンダム経済学が好評。経済の初心者の方でもわかるように執筆していきたいと思います。どうぞよろしくおねがいします。(鈴木卓実)