電力需要の停滞と石炭価格高止まりが火力発電銘柄の逆風、風力銘柄を有力視

 主力電力会社の石炭消費量が8月に前年同月比4.1%減少したことを受け、BOCIは同月の電力需要が1%以上落ち込んだ可能性を指摘している。また、年末に向け政府当局は大気汚染対策として従来型産業の「生産制限措置(減産や一時休止)」を強化する方針で、電力需要の伸びは1桁台前半から半ばで推移するとの見方。石炭調達価格の横ばいを理由に、電力各社の収益見通しは楽観できないとしている。火力発電とは異なり、電力需要の変動に左右されにくい風力発電に関しては相対的に楽観見通しを示しつつ18年6月中間決算後の利益見通しの修正を反映させる形で、電力セクター全体に対する従来の強気見通しを中立的に引き下げた。個別では華潤電力控股(00836)、華能新能源(00958)、龍源電力(00916)の株価の先行きに対して強気見通しを付与している。

 火力発電を手がける主要電力銘柄の石炭消費量は、8月9日以降23日連続で減少。これまでと比べ、気候と電力需要との相関関係がより明確となった。BOCIは電力需要への影響という点で、第三次産業と住宅の比重が高まったとの見方。一方、第二次産業の電力需要はかなり弱く、8月には前年同月比でマイナス成長に転じたとみている。

 中国政府は暖房需要が高まる向こう数カ月、大気汚染対策としての「生産制限」をさらに強化する方針であり、北京周辺一帯や長江デルタ、汾河・渭河平野(黄河支流)の80都市を対象に含める。鉄鋼や化学、セメントなど従来型産業の設備稼働率に上限を設けるもので、これが18年下期の電力需要を押し下げる可能性が高い。

 8月の電力需要の低迷にもかかわらず、石炭(動力炭)価格は相対的に堅調。電力各社の石炭在庫は8月末に異例の高水準となる22日分に達したが、中国煤炭資源網によると、9月の石炭契約価格はわずか2%程度(1トン当たり10~14元)の下げにとどまった。電力消費の低迷と石炭価格の高止まりは、特に華能国際電力(00902)や華電国際電力(01071)、大唐国際発電(00991)など、純火力発電会社にとっての逆風となる。

 一方、風力セクターは電力需要の変動に対して抵抗力が強い。また、複数の超高圧送電網の稼働や、RPS(再生可能エネルギー利用割合基準)の導入観測を受けた送電会社の風力利用意欲の高まりがプラス。これにより、電力廃棄・供給制限状況が改善する可能性が高まった。BOCIは電力需要の停滞と競争激化を理由に、風力各社の市場販売価格が下期にやや低下する可能性を指摘しながらも、限界費用が小さいことに触れ、利益へのマイナス影響は限定的とみている。

 BOCIは華能国際電力、中国電力国際(02380)の株価の先行きに対する見方を強気から中立的に引き下げる半面、華潤電力控股と風力2社、華能新能源、龍源電力に対して強気見通しを継続した。今後はRPSやREF(再生エネルギーランド)制度の確定に関する情報が支援材料になるとみている。