原油相場見通しを上方修正、川上の採掘・生産事業の追い風に
石油輸出国機構(OPEC)が7月からの実質増産(減産措置の緩和)に合意したことを受け、BOCIは北海ブレント原油のスポット相場が年内、1バレル=70~75米ドルで推移するとみている。米国による対イラン制裁の再開で、仮にイランの原油輸出が完全にストップした場合、OPEC加盟国にこの分を即時肩代わりするだけの余裕はなく、一段の原油高リスクにつながるとの見方。18~20年の原油相場見通しを12~15%上方修正し、中国石油セクターに対する強気見通しを継続している。
ベネズエラでは原油生産の低迷に歯止めがかかっておらず、国際エネルギー機関(IEA)によると、18年5月の日産量は前年同月比32%減の136万バレル。1~5月の減少ペースがこのまま続いた場合、18年末には同110万バレルに落ち込む計算となる。
OPECが6月の総会で減産措置の緩和に合意したことで、BOCIは減産履行率が5月の159%から、下期にはほぼ100%に低下するとみている。合意による生産上乗せ分の59%を占めるのがサウジアラビアであり、同国の意向が国際原油相場を左右する見込み。国営石油会社サウジアラムコのIPO(新規株式公開)計画の実現が危ぶまれる状況下で、同国は市場への一段の供給増加に否定的な姿勢を取る可能性が高いという。
米国は対イラン制裁の再開に向け同盟国に対して11月5日までにイランからの原油輸入を停止するよう圧力をかけている。BOCIはこの件がどう転ぶか不明としながらも、仮にOPEC加盟国がイランの原油輸出(日量250万バレル)を肩代わりするのであれば、予備生産力(同342万バレル)を振り向ける必要があり、今後はナイジェリアやリビアの政情不安を受けた一段の供給ひっ迫局面に対処しにくくなると指摘している。
国際原油市場における需給状況の変化を受け、BOCIは18年のブレント原油平均価格に関する予測を1バレル=63米ドルから72米ドルに上方修正。19年、20年に関しても同69米ドル(修正前60米ドル)、67米ドル(同60米ドル)に引き上げ、同時に原油価格の長期見通しを同65米ドルから67米ドルに上方修正した。
一方、中国国内では、政府当局が住宅向けの天然ガス販売価格の引き上げに動いており、これはペトロチャイナ(00857)を筆頭とする川上のガスサプライヤーに有利。自社生産事業の利益上乗せにつながると同時に、天然ガス輸入事業の赤字削減につながる。
BOCIは原油高観測に加え、人民元相場に関する想定値の見直しを反映させた上で、中国石油メジャー3社の18~20年の利益見通しを6~59%増額修正した。3社の中では原油高の恩恵や元安への抵抗力を理由に川上の採掘事業の比重が大きい銘柄が有利との見方(3社の中ではCNOOC(00883)が川上事業に特化)。川下の精製事業に関しては原油高による利益率悪化の可能性を指摘しながらも、ペトロチャイナ、シノペック(00386)を加えたメジャー3社の株価の先行きにそろって強気見通しを付与している。