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 中国は、“イノベーション(創新)”を核に、付加価値の低い産業から高い産業へ産業構造を転換することを国家戦略に掲げています。その実現に向けて、中国政府は2017年7月に、「次世代人工知能(AI)発展計画(『AI2030』)」を公表しました。これにより、AI関連産業の育成・発展を積極的に推し進め、経済の構造転換の原動力にしようとしています。中国政府が力を入れる『AI2030』はどのようなものでしょうか。

 

【ポイント1】『AI2030』は2017年に策定された新たな国家戦略

2030年に中国のAI産業を世界トップ水準にする計画

 中国政府は2017年7月に、新たな国家戦略として『AI2030』を発表しました。これは、AI産業の発展に向けた戦略目標や行程などを定めたもので、2030年に中国のAI産業を世界トップ水準に向上させる計画です。

『AI2030』では、中国のAI産業強化は3段階で進められる計画です。第1段階では、2020年までにAIの技術・応用を世界先進水準に引き上げ、AI産業の規模は1兆元(約16兆円)を目指します。第2段階では、2025年までにAIの基礎理論と一部のAI技術・応用を世界トップ水準へ向上させることが目標です(産業規模5兆元(約81兆円))。第3段階では、2030年までにAI理論・技術・応用のすべてで世界トップ水準となり、中国が世界の“AI革新センター”になる計画です(同10兆元(約162兆円)) 。

 

【ポイント2】昨年末には3年行動計画を策定

2020年までのアクションプラン

 さらに中国工業情報化部は2017年12月、『AI2030』に関する「3年行動計画(2018~2020)」を発表しました。 『AI2030』の第1段階の目標を達成するためのアクションプランです。AI家電や自動運転車、ロボット、翻訳など8つの項目にわたる主要製品の開発拡大、AIの基礎となるセンサーやチップの飛躍的な進歩、AI産業の支援システムの構築などが示されました。

 

【今後の展開】AI大国に躍り出る中国

 中国政府は民間企業を巻き込んでAIの開発を加速させています。政府主導で4つのAI重点分野を定め、 AIを手掛ける中国のトップ企業から、分野ごとにリードする企業を選定して、開発を主導させる体制を整えました。具体的には、“テンセント”は医療分野、“アリババ”はスマートシティー、“百度(バイドゥ)”は自動運転、“科大訊飛”は音声認識をそれぞれ担当し、政府の支援を受けて重点的に開発を進めています。

 中国工業情報化部によれば、中国のAI分野の特許数は世界の22%を占めているとされています。中国のAI産業は米国に比べると後発組ですが、人口規模が大きいことや中国政府の政策の強い後押しで、企業が膨大なデータを比較的緩い規制の下で活用できる優位性があります。今後もAI大国に向けて、中国のAI産業は技術力を向上させ、競争力を高めることで産業規模を拡大していくとみられます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。