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『オフィスビル空室率』や平均賃料は、オフィスビル仲介大手の三鬼商事が、毎月中旬頃に公表しています。2012年には9%台だった東京都心5区の空室率は2%台まで低下しました。また、新築ビルの空室率は2カ月連続で大きく低下しています。今後は、東京でオリンピックが開催される2020年にかけて、新築ビルの大量供給が予定されています。空室率と平均賃料に及ぼす影響が注目されるところです。

 

【ポイント1】6月の都心5区の『オフィスビル空室率』は低水準で推移

新築ビルの空室率は高稼働での竣工により大幅に低下

 7月12日に公表された三鬼商事の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の6月の『オフィスビル空室率』は2.57%でした。前月に比べ▲0.11ポイント低下し、引き続き低い水準を維持しています。

 新築ビルの空室率は3.77%で、前月比▲3.23ポイントと大幅に低下し、既存ビルの空室率は2.55%で、同▲0.05ポイントと小幅に低下しました。

 6月は、大規模ビル1棟を含めた3棟が満室や高稼働で竣工したほか、竣工1年未満のビルでも成約がみられたため新築ビルの空室率は大幅に低下しました。一方で竣工予定ビルへの移転などに伴う解約や募集開始の影響も出ていたことから、既存ビルの空室率は小幅な低下に止まりました。

 

【ポイント2】平均賃料は緩やかな上昇が続く

54カ月連続の上昇

 空室率の改善に伴い、賃料は緩やかながら上昇を続けています。6月の都心5区の平均賃料は、前月比+0.44%の坪当たり2万108円となり、54カ月連続の上昇となりました。6月は上げ幅をやや縮小したものの、平均賃料は上昇が続いています。

 6月は、新築ビルの平均賃料が2万7,847円、前月比+2.89%の上昇、既存ビルは1万9,877円、同+0.36%とともに上昇しました。

 

【今後の展開】企業の根強い需要などが『オフィスビル空室率』を下支え

 東京のオフィスビル市場は、2018年7月以降は千代田区などを中心に大型の新築ビルが竣工予定です。大企業の好立地の新築ビルへのニーズは強く、大量供給される新築ビルの募集は今後も順調とみられますが、新築ビルへの移転に伴い、既存ビルの空室率に影響が出始め、空室率は緩やかに上昇すると思われます。ただし、日銀による金融緩和政策が続く見込みであることから低水準の長期金利と、好調な企業業績を背景とした企業の根強いオフィスビルへの需要などが空室率の下支え要因になると考えられます。