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2018年6月12日~13日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の引き上げが決定されました。『FOMC議事要旨』によれば、経済見通しに修正はなく、前回からの変化としては、保護主義的な貿易政策が下振れリスクとして指摘された程度でした。今後の金融政策についても、中立金利と見られる約3%に向けて緩やかな利上げを継続する見通しです。
【ポイント1】経済見通しに修正はなし
拡張的な財政政策、良好な金融環境が米国経済を下支え
公表された議事要旨によれば、FOMC参加者による米国経済の見通しに変更はなく、「力強く拡大する労働市場や拡張的な財政政策、良好な金融環境、消費者および企業マインドの高まり等に支えられ、米国経済は潜在成長率(※)を上回る成長を続ける」でした。
物価については、「最近の上昇率は、FOMCの目標値である+2%を中心とする上下対称的な水準で推移」していると評価しました。
※潜在成長率とは、インフレやデフレを引き起こすことなく、中長期にわたって持続できる潜在的な経済の成長率のことです。
【ポイント2】経済見通しに対する懸念材料は、トランプ政権の通商政策
一方で、拡張的な財政政策が景気を上振れさせる可能性を指摘
景気見通しに関する懸念材料として、ほとんどの参加者が、米国の通商政策を挙げました。トランプ政権の保護主義的な通商政策に対する不透明感が、企業マインドを冷やし、設備投資を下振れさせる恐れがあるということです。
一方、財政政策については、「参加者は総じて、最近の財政政策の変更が向こう数年間の経済成長を支えるとの見方を維持し、そのうち数名は景気の上振れ要因と指摘」しました。これらの景気下振れリスクと景気上振れリスクは、ほぼ均衡しているとされました。
【今後の展開】中立金利と見なされる約3%に向かって緩やかな利上げを継続へ
今回のFOMC声明文からは、従来の「政策金利は、長期的に妥当と見られる水準以下に維持される公算が大きい」との文言が削除されました。『FOMC議事要旨』によれば、「雇用と物価の安定というFOMCに課された使命が達成されつつあるということを示すものであり、将来における金融政策の変更を示唆するものではない」ということです。
FOMCメンバーによる経済見通しのうち、政策金利の長期予測値は、FOMCメンバーが想定する中立金利(景気を抑制も刺激もしない金利水準)と見做すことができます。6月FOMCでの、政策金利の長期予測値は2.88%です。FOMC参加者の多くは、緩やかな利上げを継続すれば、来年には、この水準に到達する公算があると見ているようです。