通信料引き下げでデータ収入減少、キャリア各社の利益率は改善傾向持続へ

 中国国内の4G普及率が73%に達する中、BOCIはモバイルデータサービスの厳しい価格競争を予想しているが、その一方、通信キャリアの利益率については改善傾向を維持するとみている。4G通信容量の増強による投資リターンが期待できることや、ショートビデオ、ライブストリーミングといった新規コンテンツの牽引でデータ利用が力強い伸びを続けていることが背景。ほかに販売・マーケティング費の抑制も利益率の改善につながる見通しという。BOCIは通信セクターの先行きに対して強気見通しを継続し、個別では3大通信キャリアと設備サプライヤー中国通信服務(00552)の株価の先行きに対して強気の見方。3大キャリアの中では、チャイナ・ユニコム(00762)、チャイナ・テレコム(00728)、チャイナ・モバイル(00941)の順で選好している。

 中国工業情報化部の最新統計によれば、5月のモバイルデータ利用量は前年同月比157%増加し、加入者1人当たりでは同209%増の月間4.28GBを記録した。それにもかかわらず、「1ギガバイト(GB)当たりのモバイルデータ収入」は同71%減の8.1元と急降下し、モバイルデータ総収入は同11%減の428億元と、初めて前年同月実績割れ。その結果、5月のモバイルサービス全体の収入はわずか同2.1%の伸びにとどまった。一部キャリアが「データ使い放題」の新たな優遇プランを導入したことが、利用量の急増と収入の下押しを招いた要因。短期的に1GB当たりモバイルデータ収入の下降トレンドが続く見通しという。

 BOCIは国内の4G普及率が73%に達したことや政府当局が通信サービスの「高速化・低価格化」を要求している事情から、データ利用料金の値下げ競争が続くと予想。その背景として以下を指摘した。◇4G基地局の稼働率が極めて低水準にある。1日当たり処理量は17年の平均23GBから18年には同50GBに上向く見通しだが、フル稼働には依然ほど遠い、◇低稼働率にもかかわらず、4G基地局1カ所当たりの収入は大きい。向こう2年で60%の値下げを想定しても、1局当たりの年間収入は18年に16万1,300元、19年に14万7,100元と、基地局の設備交換コストや増設コストを上回る。

 データ利用料の値下げ競争を見込む半面、BOCIは通信キャリアのEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)マージンが今後も上向きに推移するとみている。4Gネットワーク敷設がほぼ完了したことによるコスト軽減が主な理由。また、キャリア各社は「新規の顧客獲得」から、魅力的な利用プランの導入を通じた「既存顧客の保持」に重点をシフトしており、マーケティング費や販売手数料などの軽減も期待できる状況にある。

 一方、レーティング見直しにつながる可能性がある通信セクターの潜在リスク要因として、BOCIは通信料金に関する政策規定がキャリア各社の予想以上の採算悪化を招く可能性を挙げている。