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『日銀短観』は、日銀が金融政策運営の参考にするため、3カ月ごとに約1万社の企業に行う「全国企業短期経済観測調査」のことです。大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が代表的な指標として最も注目されます。景況感のほかに、企業の売上、収益、設備投資、雇用などの計画や状況判断も発表されます。今回の『日銀短観』では、コスト高などから大企業・製造業のDIが2期連続で悪化しました。
【ポイント1】大企業・製造業の景況感は2期連続で悪化
大企業・非製造業の景況感は小幅改善
7月2日発表の6月の『日銀短観』では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断DIが前回の3月調査から3ポイント低下の21となり、高水準ながら2四半期連続で悪化しました。2期連続の悪化は、2012年12月以来です。業種別にみると、石油・石炭製品、木材・木製品、自動車の低下が目立ちました。原材料高や米中貿易摩擦の影響とみられます。また、3カ月後の先行きのDIは、横ばいが見込まれています。
一方、大企業・非製造業の業況判断DIは24と、前回調査から1ポイント改善しました。業種別には、電気・ガス、対個人サービスなどが上昇しました。また、先行きのDIは、3ポイント低下が見込まれています。
【ポイント2】設備投資計画は堅調
18年度想定為替レートは107.26円
18年度の設備投資計画は、大企業・全産業ベースで前年度比+13.6%と前回調査(同+2.3%)から大きく上方修正されました。設備投資計画は過去平均に比べ堅調です。
注目される大企業・製造業の18年度の想定為替レートは、1ドル=107円26銭と、前回調査から2円以上円高方向に修正されました。
雇用人員判断DI(全規模・全産業ベース)は▲32(前回調査▲34)と、やや緩和しました。
【今後の展開】堅調な設備投資や円安効果が株式市場をサポート
2日の株式市場では、米中貿易摩擦の激化が懸念されるなか、日経平均株価は前日比492.58円安の21,811.93円で終了しました。ただし、『日銀短観』発表後の前場の引け値は33.75円安と前日比ほぼ変わらずとなっており、『日銀短観』で大企業・製造業の景況感が悪化した影響は大きくはなかったとみられます。米中貿易摩擦への懸念が引き続き株式市場の重石となる一方で、『日銀短観』の大企業の設備投資計画が堅調であることや、18年度の想定為替レートが1ドル=107円26銭と足元の為替水準を下回っており、現状水準が続けば企業収益の押し上げ要因となることが株式市場をサポートすると思われます。