資産残高ごとに投資スタイルを考えてみよう

 今回は「資産残高」と投資スタイルというテーマを取り上げてみます。投資に供する資産の残高によって投資のスタイルは若干の変化が生じます。

 例えば資産50万円の人が100万円に増やそうとするのと、資産3,000万円の人が3,100万円に増やそうとするのは、スタイルが異なるのは当然です。しかし、あまり自覚してない人のほうが多いと思います。

 特に、資産がまだ少ないときの投資スタイルはどうするべきか、あるいは少しずつ資産を増やしていくに従ってどう投資のやり方を変えていくべきか、というテーマを考えてみたいと思います。そしてそれは投資家としてのステップアップとも連動しています。
 

アンダー100万円ステージ:まずはここを乗り越える 運用益より「追加拠出」を大切に

 最初のステージはおおむね「100万円を超えるまで」とします。初期資金として100万円を入金する人もいますが、今増えているのは、「初期資金ゼロからの積立投資スタート」という人です。

 つみたてNISAやiDeCo(イデコ)で「ゼロ円」からの資産形成をスタートさせたとき、多くの人は、投資に対する経験や知識がほぼ白紙状態で投資の世界と向き合うことになります。

 まずは少額からの積み立てを通じて投資経験を得ることにポイントを置きたいものです。この時期はむしろ運用の含み損を抱えることも経験になるので、いろんな商品に手を出したり、売買を何度かやってみるのもいいでしょう。

 ただしつみたてNISAで売却することはNISA口座から資産が手元に戻ることを意味しますし(税制優遇の終了)、iDeCoでの損失確定はiDeCo内での再投資チャレンジによってしか取り戻せないので、ひんぱんな売買を無理に行う必要はありません。特に安易な損失確定は避け、市場の回復を待つことがベターな選択肢です。

 また、このステージでは運用益よりも定期的な追加拠出のほうが資産総額を増やすエンジンとなります。10万円の残高を1カ月で11万円にする運用はなかなか困難ですが、1万円の拠出を1年続ければ元本は確実に12万円増加し、資産額は倍増します。まずは追加拠出を続けるようにしてください(特に株価が下がっている時期にも追加をすることが効果的)。

 このステージを突破するのに、数年かかることはおかしなことではありません。むしろこの時期の投資経験を大事にしてください。それはその後の何十年にも及ぶ投資経験の基礎となるはずです。

アンダー500万円ステージ:「解約」の誘惑との戦い

 100万円の残高を突破した人の、次の突破目標を500万円に設定してみます。実はここを早い時期に超えられるかどうかが、資産形成のケタをひとつ上げるためのポイントです。

 初めて自分の投資資金が100万円を超えると、運用方針についてはある程度整理しておく必要がでてきます。個別銘柄に夢中になる投資家となるスタイルもありますし、投資信託やETF(上場投資信託)をベースとしつつ個別株をいくつか保有するようなポートフォリオを少しずつ形作っていくスタイルもあります。

 仕事やプライベートに支障を及ぼさずに投資を続けたいのであれば、後者のほうをオススメします。つみたてNISAやiDeCoは制度の特性から投資信託ベースの資産形成になります。これに証券総合口座での個別株保有を加えていくことになるでしょう(あるいはNISAとiDeCoの組み合わせとしてNISA口座で個別株を保有する)。

 ところで、このステージの課題はもうひとつあります。それは解約の誘惑です。資産形成において「追加拠出」が鍵であることは~100万円コースと同様なのですが、このステージでの次の鍵は「解約しない」「継続する」ということです。

 数百万円があり、その一定割合は運用益によって獲得できたという気持ちがあると、どうしても「何かあったら使っていいお金」と考えてしまいます。

 車を買おうとか、いい部屋に引っ越しをしようとか、まとまった資金ニーズを無理矢理見つけてそのために解約をする誘惑にかられるようになります。

 細々と数万円くらいずつおろしてしまうのも要注意です。「今日は増えているみたいだから少し売って、子どもを連れて寿司に行こう」といったことに資産形成上の資産を取り崩していると資産はなかなか増えなくなります。

 解約の誘惑と戦うのは、投資でリスクをコントロールするのと同じくらい自分をコントロールする課題です。追加拠出を続けていくことはもちろん、運用益を取り崩すこともできるだけ避けるようにしてください。「そこにお金はある」が「解約はせず資金ニーズは目の前のやりくりで切り抜ける」というのが、実はアンダー500万円のステージのコツなのかもしれません。