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昨年、選挙イヤーだった欧州では注目されていたポピュリズム政権の誕生はなく、好調な景気を背景に、通貨ユーロは上昇基調でした。しかし、今年4月以降、『ユーロ安』に転じています。ユーロ圏景気の減速と、イタリアやスペインでの政治リスクの高まりに加え、米国の保護主義的政策に対する懸念が影響しました。政治リスクは今後も続くとの声も聞かれる中、こうした『ユーロ安』の要因はどのように見ていけば良いのでしょうか?
【ポイント1】イタリアやスペインで政権が交代、不透明感が続く
イタリアではポピュリズム政権が誕生、スペインは総選挙となる見通し
3月に行われたイタリア総選挙では、ポピュリズム政党・五つ星運動と極右政党・同盟がそれぞれ33%と17%を獲得し、連立協議を行いました。連立協議では、首相候補が変わるなど紆余曲折がありましたが、6月6日にコンテ内閣が発足し、3カ月間の政治空白に終止符が打たれました。
一方、スペインでは、6月1日に当時のラホイ首相が党首を務める与党・国民党が汚職に関する非難を受け、首相に対する不信任決議案が可決されました。ラホイ首相退陣後は、野党・社会労働党のサンチェス党首が新首相に就きました。社会労働党は数カ月以内に下院を解散し、総選挙が行われると見られます。
【ポイント2】ユーロ圏景気は堅調ながらも減速
ECBは量的緩和を終了し、利上げに向かう見込み
ユーロ圏景気は、昨年秋をピークに景気の勢いが減速しています。これは冬の悪天候や一部産業のストライキなど、一時的な要因によるものと見られます。欧州中央銀行(ECB)も景気については底堅いとの認識を示しています。
【今後の展開】政治的不透明感や米欧の貿易摩擦などがユーロの変動要因
こうした政治リスクや景気の減速を背景に、今年4月以降、通貨ユーロは下落しています。これに加え、米国が発表した鉄鋼やアルミニウムへの関税引き上げについて、欧州がその対象となっていることも『ユーロ安』に影響しています。
政治リスクについては、イタリア新政権はユーロ離脱の意向がないことを強調したものの、ポピュリズム政権であることも明言しており、再び欧州でポピュリズムが台頭することへの懸念がくすぶります。また、政権公約の実現に伴い財政悪化が懸念されていることに加え、コンテ首相は政治経験が無いことからその手腕が不安視されています。欧州景気については、雇用や設備投資が底堅いことから、徐々に持ち直すと予想されます。またECBは年内にも量的緩和を終了し、来年には利上げに向かうと見られます。貿易摩擦では、米国の強硬な交渉姿勢がしばらく続くと見られることから、当面不透明材料になると思われます。引き続き、イタリアやスペインでの政治の行方や、米欧間での貿易摩擦などがユーロの変動要因として注目されます。