ナスダック復活は日米株式の戻りに追い風

 今週の日米市場では、週初から株価指数が下値を切り上げる動きとなりました。欧州の政治的な不安がいったん後退しましたが、1日に発表された米・雇用統計(5月分)やISM製造業景気指数が予想を上回ったことで、米ダウ平均が反発に転じました。為替市場でもドル/円が110円前後に上昇し、日経平均株価は節目とされる2万3,000円に再挑戦する堅調となっています。

 目先のリスクイベントとして、ワシントンでの日米首脳会談(7日)、カナダでのG7(先進国首脳会議/8~9日)、シンガポールでの米朝首脳会談(12日)、FOMC(米連邦公開市場委員会/12~13日)での追加利上げや今後の金融政策を巡る声明などが挙げられます。市場参加者はイベントの無事消化を見越してリスク選好に動いているようです。特に米国市場では、トランプ政権による強硬な外交政策や貿易紛争との関わりが比較的薄いとされるメガテック(時価総額が大きいハイテク)銘柄の株価が堅調となっています。

 先週から今週にかけ、足元の業績好調が確認されてきたアップル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、フェイスブック、ネットフリックスなどが上場来高値を更新。ハイテク(IT)比率が高いナスダック総合指数やFANG指数(NYSE FANG+指数)は連日で史上最高値を更新しており、米国市場におけるリスク許容度回復を鮮明にしています(図表1)。

図表1:米国市場ではFANG指数やナスダック指数が高値を更新

出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年6月6日)  

東証で「2020年に向けた大型成長株」を選別してみる

 先週(6月1日掲載)のレポート「イタリア発の株価波乱?押し目はセクター選別の好機」では、「東証17業種指数」をユニバース(母集団)にし、2020年までの予想EPS(市場予想平均)の増益率(予想伸び率)でランキングした一覧をご紹介しました。

 今週は、米国で時価総額が大きい成長銘柄(メガテック銘柄)がリードして株式が堅調となっている現状に鑑み、日本の東証上場大型株(TOPIX100指数銘柄=東証の時価総額上位銘柄(市況変動に左右されやすい「鉱業」を除く)をユニバースにし、2018年度(主に2019年3月期)予想EPSに対する2020年度(主に2021年3月期)予想EPSの増益率(利益成長率予想)を降順に並べ、上位15銘柄のみを一覧にしました(図表2)。これら15銘柄には、商品やサービスで競争力が高いグローバル企業が多く含まれ、「2020年度までの予想増益率」の算術平均が+43.4%と高く、内外機関投資家の注目度も高いと考えられます。実際、同15銘柄の「1年前比騰落率」は平均して+24.2%と、TOPIXの1年前比騰落率(+12.0%)の約2倍となっています(6月7日時点)。

図表2:東証大型株の「予想利益成長率」上位15銘柄

TOPIX100指数銘柄-2020年度までの予想EPS増益率ランキング ↓(降順)
# コード 銘柄名 業種名

株価
(円)

1年前比
騰落率

予想PER 予想配当
利回り%
2020年度
までの
予想増益率%
18年度 20年度
1 9984 ソフトバンクグループ 情報・通信業 8,248 -8.0 16.9 9.1 0.5 85.7
2 7011 三菱重工業 機械 4,135 -4.7 17.1 10.8 3.0 57.5
3 7974 任天堂 その他製品 40,970 19.6 22.1 14.6 2.4 51.1
4 6098 リクルートホールディングス サービス業 2,989 46.5 30.8 20.5 0.9 50.3
5 9064 ヤマトホールディングス 陸運業 3,302 39.6 34.3 23.1 0.8 48.2
6 4911 資生堂 化学 9,177 135.9 50.9 34.6 0.4 47.4
7 4502 武田薬品工業 医薬品 4,326 -23.1 15.2 10.3 4.2 47.3
8 4528 小野薬品工業 医薬品 2,540 10.1 24.6 16.9 1.8 45.8
9 4578 大塚ホールディングス 医薬品 5,330 7.6 26.4 19.1 1.9 38.0
10 6594 日本電産 電気機器 17,040 45.3 31.3 22.9 0.6 36.7
11 6273 SMC 機械 42,080 18.2 17.4 13.4 1.0 30.4
12 6861 キーエンス 電気機器 66,810 32.0 33.3 25.6 0.2 30.1
13 9983 ファーストリテイリング 小売業 49,190 31.5 36.2 28.3 0.8 28.0
14 6752 パナソニック 電気機器 1,579 7.3 14.5 11.4 2.2 27.1
15 6981 村田製作所 電気機器 16,925 5.4 18.7 14.8 1.6 26.7
(注)上記は、TOPIX100指数(東証上場大型銘柄)のうち「鉱業」を除く銘柄群をユニバースにしたものです。
(注) 「2020年度までの予想増益率」(2018年度予想EPSに対する2020年度予想EPSの伸び率)の降順で並べました。
(注)2018年度予想PER、2020年度予想PER=直近株価÷当該年度別の予想EPS(市場予想平均/Bloomberg集計)
出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年6月7日)

大型成長銘柄への長期分散投資を検討する

 上記した銘柄群のなかで、特に注目したい銘柄について下記します。ソフトバンクグループ(9984)はセクターの分類(東証33業種)上で「情報・通信業」となっていますが、昨年5月に10兆円規模の「ビジョンファンド」を組成。世界の有望IT企業(未上場が中心)に分散投資を展開しています。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が経営するバークシャー・ハサウェイ社を意識した投資事業を目指しており、将来の投資収益は連結利益の拡大に寄与していくと見込まれます。

 国内では比類のない事業で、負債比率が高いこともあり、2020年度の予想PERは10倍未満に留まっていますが、専門家(アナリスト)による「2018年度予想EPSに対する2020年度予想EPSの増益率」は+85.7%と高成長が見込まれています。リクルートホールディングス(6098)は、2014年に上場後、国内有数の情報サービス・マーケティング企業となっています。「働き方改革」や「人材活用」をリードしている企業としても高い評価を得ています。

 同社も2020年度までに50.3%の利益成長が見込まれています。ヤマトホールディングス(9064)は、宅配便で国内シエア1位であるヤマト運輸などを傘下に持つ持株会社です。ヤマト運輸は、人手不足に起因する賃上げなどのコスト上昇で、宅配事業の基本運賃値上げ(単価引き上げ)に踏み切りました。Eコマース(取引数量)拡大で市場は成長を続けており、「値上げを実施できたデフレ脱却ビジネス」との評価もあります。

 アジア各国での事業展開も積極的に進めており、2020年度までに48.2%の利益成長が見込まれています。資生堂(4911)は、インバウンド(訪日外国人旅行客)需要の好調と「帰国後消費」の拡大で高級化粧品の販売が内外で好調です。最近は、中国政府が「化粧品を含む消費財の輸入関税を7月から引き下げる方針」を発表したことも追い風です。

 日本電産(6594)パナソニック(6752)は、世界の自動車産業で「自動運転車」や「電気自動車(EV)」の開発と普及が進むなか、付加価値の高い車載用電子部品で高い競争力を誇っています。これら成長期待の強い銘柄群の株式時価総額は相対的に増加していくと見込まれ、TOPIX(時価総額加重平均指数)内でのウエイトは徐々に高くなっていくと考えられます。以上は参考情報ですが、中長期で高い利益成長が見込まれている大型成長銘柄にセクター(業種)分散しながら長期投資していく戦略に注目したいと思います。

 

 

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