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『貿易収支』とは、財およびサービスの輸出と輸入の差のことです。輸出が輸入を上回る状況を貿易黒字、逆に輸入が輸出を上回る状況を貿易赤字といいます。一国の輸出入は、海外及び国内の景気や為替動向の影響を受けますが、米国の輸入は国内需要に対する感応度が極めて高いため、国内景気が良くなると貿易赤字が拡大する傾向が強まります。

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【ポイント1】拡大する米国の貿易赤字

2018年1~3月期の貿易赤字は2005年以来の規模

 米国の『貿易収支』は、1970年代以降ほぼ一貫して赤字を計上しています。2017年の年間では▲5,684億ドル、直近2018年1~3月期は▲1,634億ドルとなり、前期の▲1,539億ドル、前年同期の▲1,378億ドルを上回りました(データは季節調整済み)。2017年10月以降、赤字幅は拡大しつつあります。

 

【ポイント2】対米黒字額が大きいのは中国、日本、ドイツなど

なかでも中国の対米黒字が際立つ

 国別に見ると、中国の▲911億ドルを筆頭に、メキシコの▲183億ドル、日本の▲175億ドル、ドイツの▲159億ドルと続きます。米国の場合、対中貿易赤字が圧倒的に大きいのが見てとれます。

 品目別では、機械・輸送機械の▲1,737億ドルが目立ちます(国別、品目別の『貿易収支』は季節調整をかける前のデータ)。

 

【今後の展開】注目されるトランプ大統領の通商政策

 トランプ米大統領は、貿易赤字が米国の経済成長を抑制し、米国の労働者から職を奪っていると訴え、日本や中国等といった貿易黒字国に対して、通商協定による対米黒字削減を求めています。これに沿って、トランプ政権は、鉄鋼・アルミの輸入品に対する追加関税の賦課や中国に対する制裁措置を発表しました。

 米国の輸入は、内需に対する感応度が極めて高く、内需が拡大すると輸入が顕著に増加する傾向があります。

 足元の米国の景気は堅調に推移しています。さらに、今後は減税や財政支出の増加によって、内需が一段と拡大する公算が大きいと見られます。

 このような状況で輸入抑制的な政策をとれば、輸入品価格の上昇や、国内での需給ひっ迫を通じて国内製品の価格を引き上げる可能性、ひいては消費者の重石となる恐れがあります。今年11月に中間選挙を控えていることもあり、トランプ大統領が今後どのような通商政策を追加的に打ち出すのか、警戒が必要です。