日本では新会計年度がスタートしたが、国内の投資家やアセット・アロケーターは国内/グローバル市場が直面している重要課題についてどう考えているのだろうか?当社は具体的な事例を拾うのではなく、当社のクライアント、すなわち比較的広い範囲の国内投資家(公的・民間年金基金の運用担当者、ファンド・マネジャー、アセット・アロケーター、一部のプライベートウェルス・アドバイザーなど)を対象にサーベイを実施した。

 最近、安倍首相の支持率は大きく落ち込んでいるが、それでも回答した国内投資家の70%が今年9月の自民党総裁選後も安倍首相が続投すると予想している点は非常に興味深い。今秋の首相交代を予想しているのはわずか30%にすぎない。

 安倍首相の後任として最もふさわしいのは誰だろうか?圧倒的に優勢な候補は見当たらないが、調査結果は岸田政調会長が40%、そして若手の小泉進次郎議員が30%と他者を大きく引き離している。自民党内での影響力が強い石破氏はわずか15%、河野外務大臣は10%だった。麻生財務大臣の後任に岸田氏が指名されれば、この構図は岸田氏にとってさらに有利に動くと筆者はみている。

 金融政策と財政政策についてはどうであろうか?次回の消費税増税に関する国内投資家の見方が大きく分かれた結果にはやや驚いた。回答者の42%は増税が予定通りに実施されるとはみていない(2019年10月の消費税率8%から10%への引き上げは閣議決定事項)。増税は確定されたものと筆者は考えていたが、新たに浮上してきた政局不安の影響のひとつとして、安倍首相の後継者、あるいは安倍首相自身が支持率を押し上げるために不人気な増税をまた先送りする可能性が出てきているようである。9月の自民党総裁選が近づくにつれて増税をめぐる論議が活発化し、その後に2019年度予算案の審議が始まる見通しである(2018年10月に議論が本格化)。

 金融政策全般、特に日銀が10年物国債金利目標の引き上げに踏み切るタイミングについて、投資家の見方ははっきりと分かれているようだ。回答者の30%は2020年の東京オリンピック開催前の利上げはないと考えているが、27%は2018年12月から2019年3月の間に利上げは実施されるとみている。また、12%の見方はもっと積極的で、今年10月には最初の利上げがあると予想している。しかし、中心的な見方は「2019年春ごろ」から「東京オリンピック以降」である。このように、調査結果を見ると日銀のコミュニケーション戦略がまずまずの成功を収めていることがわかる。

 投資家は地政学的な緊張状態に強い関心を寄せており、目下、最も注目しているのは間近に迫った米朝首脳会談である。この首脳会談は株式市場にどのような影響を及ぼすだろうか?日本市場にとってポジティブと答えた回答者は全体の50%だったが、グローバル市場については42%にとどまった。とはいえ、ネガティブな影響を予想しているのは少数派だった(グローバル市場は8%、日本市場は10%)。為替に対するインパクトについては42%が円安、16%が円高、42%は影響なしとの回答だった。

 最後に、2019年に米国が景気後退に陥るリスクについて質問した。回答者の1/3が景気後退の起こる確率は低い(15%以下)とみている一方、43%の回答者は確率を30%、20%の回答者は50%と予想している。50%以上の景気後退リスクを見込んでいるのはわずか4%にとどまった。従って、2019年の米国の景気後退シナリオを念頭に置いている日本の投資家は明らかに少数派だが、このリスクシナリオに対する警戒感は強まっていると考えられる。

 

2018年4月27日 記

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