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米国の労働省が公表している「雇用統計」には、採用件数や離職件数等のデータがなく、雇用者数の変動が、採用の増減によるものか、あるいは離職者の増減によるものかまではわかりません。これを補う統計として作成されているのが、同じく労働省の「雇用動態統計」(JOLTS)です。JOLTSには、採用件数、離職件数のほか求人件数の統計も含まれているため、労働需給や需給の変動要因を捉えることが可能です。
【ポイント1】求人件数、採用件数とも拡大基調を続けている
最近では求人件数が採用件数を上回る
最新のJOLTS (Job Openings and Labor Turnover Survey)によれば、18年2月における米国の求人数は605万件、採用件数は551万件、離職件数は519万件でした。それぞれ09年7月の220万件、09年6月の368万件、10年10月の378万件を底に増加を続けています。
求人件数と採用件数を比較すると、15年辺りから求人件数が採用件数を上回り、その後、両者の差は広がる傾向にあります。強い求人(労働需要)に労働供給が追いついていないもようです。
【ポイント2】労働需給の不均衡を測るミスマッチ指数
求人数と求職数のかい離を測る指標
仮に労働需給にミスマッチが生じているならば、それを是正しようとする力が働き始めます。このような調整の圧力が強まってくると、景気後退に陥る可能性が高まります。それでは、実際に米国の労働市場で『需給のミスマッチ』は生じているのでしょうか?
労働需給の不均衡を測る指標に、労働需給ミスマッチ指数があります。この指数は、求人数(労働需要)と求職数(労働供給、求職数の統計はないので失業者数で代理)がどの程度かい離しているのかを、業種ごとに測定、統合し、指数化したものです。
【今後の展開】米国労働市場に『需給のミスマッチ』は見られない
求人数が収録されているJOLTSが遡れる01年以降で見ると、労働需給ミスマッチ指数が上昇に転換すると、つまり労働需給の不均衡が拡大の方向に進むと、間もなく米景気が後退に陥っているのがわかります。
労働需給ミスマッチ指数は15年に上昇しましたが、16年の年初には再び低下し、その後も低い水準で推移しています。同指数から判断する限り、米労働市場に『需給のミスマッチ』はなく、米景気が近い将来、後退に陥る可能性は低いと見られます。