世界の食肉消費量は50年間で5倍増

 次のグラフは、世界で主に食されている肉の消費量の推移です。牛肉、豚肉、鶏肉の消費量はいずれも増加傾向で、この50年間でおよそ5倍になりました。

図:世界の食肉消費量推移 単位:千トン

出所:USDA(米農務省)のデータより筆者作成

 

 世界的な肉の消費量増加は、世界人口の増加、それに伴い、肉食の文化が浸透してきていることによるものだと考えられます。

 空腹を満たす、満足感を得る、人間が生きる上で必要なタンパク質を摂取するため……さまざまな動機により、わたしたちは肉を食べています。

 今後も世界人口の増加が見込まれていることから、肉の消費量はしばらく増加し続けるとみられます。

 

豚肉消費量は牛肉消費量のおよそ2倍

 中でも牛肉と豚肉の消費量を比較してみると、ともに消費量は増加する傾向にあります。

図:牛肉、豚肉の世界の消費量推移 単位:千トン

出所: USDAのデータより筆者作成

 これらのデータの推移の特徴として、1979年に豚肉が牛肉の消費量を追い越し、その差は拡大。2017年時点で豚肉の消費量は牛肉の消費量のおよそ2倍です。

 決して牛肉の消費量が減ったわけではなく、豚肉の消費量が勢いづいていると言えます。
牛肉よりも豚肉の消費量が増えたのは次の理由によるものだと筆者は考えています。

  • 肉になるまでの期間が短い(出荷時月齢 牛30カ月、豚7カ月)
  • 1回の分娩頭数が多い(牛1頭、豚10頭)
  • エサのコストが安い(肉1キログラムを生産するために必要な穀物の量:牛7キログラム、豚4キログラム)
  • 飼育に必要な土地が狭い
  • 解体前の体重が軽く運搬しやすい

 つまり豚は、牛に比べて時間とお金と労力をかけずに、食肉となりやすい、と言えます。
こうしたメリットは、世界的な人口増加に対応できると言えます。つまり人口増加に対応するために、牛ではなく豚が選ばれてきた結果だと思います。

 また、牛は労働力として用いられることがあります。これは、牛が豚よりも
消費量が少ない理由の一つだと思います。

 

豚肉消費、中国が世界の半分を占める

 豚肉の消費量を国別で見てみます。

図:世界の国別 豚肉消費量 (2017年) 単位:千トン

出所: USDAのデータより筆者作成

 世界の豚肉消費量の半分を中国が占めています。中国では豚肉が好まれるという話もありますが、それに加えて同国の人口増加に対応したのが牛ではなく豚だったという点が大きな理由であると考えています。

 また、上位にランクインした国は、中国をはじめ、日本、ベトナム、韓国、フィリピンなどアジアの国が多いことがわかります。

 

牛肉消費、米国が1位

 牛肉の消費量を国別で見てみます。

 やはり、米国が1位でした。

 豚肉と異なり、アルゼンチンがランクインしたのは、植民地時代から牛肉の消費が盛んだったこと、そして同国がエサ(飼料)に用いられるトウモロコシや大豆の主要な産地であることが背景にあると考えられます。

図:世界の国別 牛肉消費量 (2017年) 単位:千トン 

出所: USDAのデータより筆者作成

 

 

今後、牛肉も豚肉も消費量が増加する可能性あり

次のグラフは、日本の牛肉消費量の推移です。

図:日本の牛肉消費量の推移 単位:千トン

出所: USDAのデータより筆者作成

 2000年初頭に起きた国内外のBSE(牛海綿状脳症)問題によって消費量が減少するまで、日本の牛肉消費量は増加傾向にありました。その背景には、世界的にまれな勢いの経済成長、それに伴う食文化の欧米化があったと考えられます。

「豊かさ」が牛肉の消費量を伸ばす一因となったと筆者は考えています。

 その「豊かさ」を測るモノサシの一つに「一人当たりGDP(国内総生産)」というものがあります。

 これは、その国民が国内外で生産したモノやサービスの額の合計を、その国の人口で割った値です。 一人当たりGDPが1万ドルを超えると、おおむね先進国と言われています。

 以下は、中国の一人当たりGDPと豚肉、牛肉の消費量の推移です。

図:中国の一人当たりGDP(右軸)と中国の豚肉、牛肉の消費量(左軸)の推移

 出所:IMF(国際通貨基金)、米農務省(USDA)のデータより筆者作成

 中国の一人当たりGDPは先進国の目安と言われる1万ドルを目指す勢いで急上昇しています。このような一人当たりGDPの上昇は中国の「豊かさ」が向上してきていることを示していると言えます。

 人口増加に裏打ちされ、豚肉の消費量は大きく増加していますが、牛肉はまだ大きな増加とはなっていません。

 長期的な視点で今後、中国の一人当たりGDPが示す「中国の豊かさ」がきっかけとなり、中国において牛肉の消費量が増加する可能性があります。

 また、豚肉については以下のとおり、アジア諸国の消費量が増加傾向にあります。

図:アジア諸国の豚肉消費量 単位:千トン

出所:米農務省(USDA)のデータより筆者作成

 アジア諸国で予測されている人口増加は、中国がこれまでそうであったように、この国々の豚肉消費量をさらに拡大させる可能性があります。

 先進国と言われる付近まで1人当たりGDPが上昇している中国の経済成長を背景に、牛肉消費量は増加、アジア諸国の人口増加を背景に、豚肉は消費増加するというシナリオを筆者は考えています。

 

「海外ETN」なら畜産物への長期投資が可能

 楽天証券では「海外ETN取引」において、畜産物やそれに関連する銘柄を取り揃えております。長期的な視点で価格の推移をご注目ください。

図:楽天証券で取り扱っている海外ETN銘柄の一例

対象指数であるBloomberg Livestock Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は生牛、豚赤身肉の先物価格を対象としており、ETNを通して畜産物への投資を可能としている。構成は、生牛68%、豚赤身肉32%となっている。
対象指数であるBloomberg Commodity Index Total Returnに連動するETN。同指数は、複数の商品先物価格を対象にしており、ETNを通してコモディティへの投資をすることができる。構成は、エネルギー31%、穀物22%、産業用金属17%、貴金属15%、農産物6%、畜産物6%などで構成されている。
対象指数であるS&P GSCI Total Return Indexに連動するETN。同指数は、原油62%、産業用メタル11%、穀物10%、畜産物6%、貴金属4%、農産物3%など複数の商品先物で構成されており、ETNを通してコモディティへの投資をすることができる。同指数は、コモディティ投資のベンチマークとして利用される。
'対象指数であるBloomberg Grains Subindex Total Returnに連動するよう運用されるETN。同指数は、コーン、大豆、小麦の先物価格を対象としており、ETNを通して穀物への投資をすることができる。構成は、コーン39%、大豆38%、小麦21%となっている。
 
'対象指数であるBloomberg Agriculture Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は、コモディティの中のコーン、大豆、砂糖、小麦、大豆油、大豆粕、コーヒー、綿の先物価格で構成されており、ETNを通して農作物への投資をすることができる。構成は、コーン24%、大豆23%、小麦13%、砂糖12%、大豆油10%、コーヒー9%、コットン5%となっている。

 

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