「対外開放」で自動車関税率引き下げへ、輸入車ディーラーに有利

 中国の習近平国家首席は4月10日、「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」の基調演説で国内経済の対外開放方針を示し、自動車輸入関税を年内に“大きく”引き下げる方針を示した。また、自動車合弁メーカーの外資側の出資比率制限もできるだけ早期に見直すとの方針を表明。BOCIは、米中貿易摩擦が激化する可能性は後退したとみている。

 中国政府が自動車輸入関税を現行の25%から、15%、10%に引き下げた場合、BOCIの試算では、国内でのメーカー希望小売価格(MSRP)はそれぞれ8%、12%低下する。例えば「BMW X5 xDrive 28i」のMSRPは現在の75万8,000元から、69万7,400元(15%を想定)、66万7,000元(10%を想定)に値下がりする見込み。そうなれば、輸入車の価格競争力が強まり、輸入車を扱う中升集団(00881)、中国永達汽車服務(03669)、中国正通汽車服務(01728)などのカーディーラーに有利となる。特に国内で生産されていないレクサスやポルシェを扱うディーラーに恩恵が及ぶ見通しという。

 一方、海外有力ブランドの生産を手掛けるブリリアンスBMW、北京ベンツなどの合弁メーカーにとって、輸入関税の引き下げはややマイナスとなる可能性が高い。今のところ、国内生産車と同型のモデルは中国側パートナーの合意なしでは輸入できず、さらにBMW5やベンツEシリーズといった主要な合弁生産車は国内ユーザーの志向に合わせてカスタマイズ済み。ただ、関税引き下げが実施されれば、ほぼ同型の輸入車と国内生産車との価格はやはり接近する。BOCIはこれにより、特に「BMW X5」など、大型モデルのローカル化計画が延期される可能性があるとした。半面、広汽ホンダ、広汽トヨタ、東風日産を含むマスマーケット向け車種に関しては、中国側の価格決定力が強く、中外双方の関係も緊密であるとの理由から、関税引き下げによる影響は軽微とみている。

 もう一つ、自動車合弁事業における外資側出資制限の見直しに関しては、今のところ詳細は不明だが、BOCIは既存事業への影響は限定的との見方。従来型車種の合弁事業はすでに歴史が長く、成熟度が高いことなどをその理由に挙げた。一方、新エネルギー車(NEV)などの新規分野には影響が及ぶとみて、海外有力メーカーによる中国現地生産が加速する可能性を指摘している。うちテスラは自由貿易区に単独出資の現地法人を設立する計画であり、すでに上海政府との協議が進行中だ。このほか、吉利汽車(00175)に代表される中国地場系メーカーに関しては外資制限の見直しによる直接的な影響はなく、むしろ今後の競争激化を受けた業界統廃合の加速がプラスに働く見通しという。

 BOCIは個別では、吉利汽車(00175)、ブリリアンス・チャイナ(01114)、広州汽車集団(02238)の株価の先行きに対して強気の見方を明らかにしている。香港上場の本土自動車(完成車)メーカーの株価は現在、2018年予想PERで8.6倍。ほかにディーラー銘柄が同7.4倍、部品メーカーが同13.5倍の水準にある。