米中貿易戦争への警戒感続く、短期的な交渉合意に期待も

 米中貿易戦争に対する警戒感を背景に、香港株式市場は当面、不安定な相場展開を続ける可能性が高い。BOCIは貿易戦争が米中双方の国益を損なうと指摘。仮に両国が全面戦争に突入すれば、世界の株式市場にとっても激震になるとして、その可能性は低いとの認識。関税引き上げの応酬は、今後の協議を優位に運ぶための戦術で、最終的には中国側が外資への市場開放や知的財産権保護を約束し、交渉が決着する可能性を指摘。ただ、米中の貿易交渉は向こう60日間以上にわたって続くとみられ、当面は世界株式市場の波乱が続く見込み。投資家のリスク選好度にも、大きく影響する可能性が高い。

 トランプ米大統領は、年間500億米ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課す大統領令に署名し、その対象となる1,300品目のリストを公表した。航空宇宙、通信・IT、ロボットなどのハイテク製品が対象。5月に意見公募を実施し、公聴会を開く運び。

 BOCIは米中の貿易が相互補完関係にあるとの認識。低価格を武器とする中国は労働集約型製品や一部の資本集約型製品を米国に輸出。逆に先進技術や高付加価値サプライチェーンに強みを持つ米国側は、中国向けに主にハイテク製品を輸出している。中国はまた、米国産農産物の一大輸出市場でもある。

 ただ、トランプ政権の追加関税対象リストを見ると、主に標的となっているのは、国内産業の高付加価値化を目指す中国の国家戦略「中国製造2025」の対象品目。同戦略の10大重点産業は、ロボット、航空宇宙設備、先進IT、ハイテク造船・海洋エンジニアリング、先進軌道交通設備、新エネルギー車、電力設備、農業機械、バイオ医薬、新素材であり、BOCIは対中貿易赤字の削減という成果は期待しにくいと指摘している。

 中国はこのリストに対する報復として、106品目、総額500億米ドルの米国製品に25%の関税を課すと発表した。対象製品は車やウイスキー、化学品、航空機、大豆をはじめとする一部農産物など。発効時期に関しては別途発表するとした。

 中国は世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、世界の加工基地として機能しており、原材料を輸入して加工し、完成品を輸出するという役割を担ってきた。これは統計上、中国の輸出となるが、BOCIは、実際には原材料を提供した各国を含むサプライチェーン全体の累積価値であると指摘。貿易収支統計は実状を反映していないとしている。

 一方、BOCIが考える最悪のシナリオでは、米中貿易戦争は実際に幕を開け、6~12カ月にわたって続く。ただ、貿易戦争の収束に伴いV字回復が見込めるため、相場の急落は中長期投資目的の投資機会になり得るという。

 貿易戦争への警戒感が続く間は、国内依存度の高い銘柄が有利となる見込み。BOCIは事業地が本土に集中しているハンセン指数銘柄や不動産大手、軍需関連、風力発電を推奨。対照的に、米国からの豚肉、ワインなどの輸入事業者にとっては不利としている。