不思議な現象

 前回2月の雇用統計では、平均労働賃金が前月比0.1%に低下(1月は+0.3%)。その一方で、非農業部門雇用者数は31.3万人と、2016年7月以来の大幅な伸び率を記録。失業率も60年ぶりの低水準を維持しました。

 労働市場に「たるみが残っている(から賃金が上がらない)」というFRB(米連邦準備理事会)の考えがもはや通用しない、非常に不思議な現象が起きているのです。(グラフ2)

 

 

「だから?」

 だからといって、FRBが利上げをストップしたわけではありません。FOMC(米連邦公開市場委員会)は先月21日の会合で、政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利誘導目標を1.25-1.75%のレンジに引き上げました。利上げ軌道は支障なく運行されています。

 今年3回の利上げはすでに織り込まれています。マーケットが知りたいのは、利上げがあと1回増えて年4回になるのかどうかということ。FOMCメンバーがインフレ見通しを上方修正するような経済状況になれば、その可能性はゼロではありません。

 

雇用統計の注目ポイントは?

 物価が上がるためには、所得が増加して消費が拡大することが必要。マーケットは、そのサインを平均労働賃金のデータに見つけようとしているわけで、それが今回も雇用統計のポイントになるわけですが、ここで「労働市場はタイトなのに賃金上がらない」問題に突き当たるのです。(グラフ3、4)

 
 

 

パウエルFRB議長の考えは?

 パウエルFRB議長はイエレン前議長とちがって、エコノミストではなく、企業経営者です。失業率が下がれば賃金は上昇するはず、といった理論にとらわれることなく、実際の状況を見て判断するでしょう。

 つまり、労働賃金が下落してもインフレ率が上昇するならば、利上げを増やすことを検討するでしょうし、逆に労働賃金が上昇してもインフレ率に表れなかったら、利上げを増やす必要はないと様子見を続けることになります。