季節要因で動力炭価格の下落を予想、コークス炭価格は堅調推移か

 BOCIは春の到来に伴い、中国の石炭価格が短期的に調整するとみている。ただ、その一方で、豪ボーウェン盆地の輸送問題や中国国内の需要増見通しから、コークス用炭価格は堅調に推移するとの見方。動力炭より、コークス炭生産者の株価の先行きに対して楽観見通しを示した。ただ、一部銘柄の株価はすでにプラス材料を織り込んだとみて、石炭セクター全体に対する中立見通しを据え置いている。

 BOCIによれば、中国の石炭需要は2017年に前年比2.0%増加したが、18年には火力発電量の減速を受け、同0.7%増に鈍化する見込み。中国北部での「煤改気」(気代煤:石炭利用からガス利用への切り替え)政策が石炭需要の重石となる見通しという。

 国内の石炭生産量は17年に前年比3.2%増の34億5,000万トンと、国家発展改革委員会(NDRC)の目標「7%増」を下押しした。10月の第19回党大会に向けた安全性基準の強化が響いた形。一方、これまで旧式炭鉱の閉鎖に照準を合わせてきたNDRCが一定条件の下、新規炭鉱の稼働を認める方針に転じたことが、今後の供給量の底上げにつながる見込み。17年6月末時点で建設中の新規生産能力は年産10億トン強だった。

 BOCIは市場価格の上昇を受け、秦皇島における山西省高品位炭の18年の価格見通しを1トン当たり平均535元から600元に上方修正。19年も同535元から570元に引き上げた。ただ、この予測値は現行価格(1トン当たり741元)を下回る水準。BOCIは、春の到来を受けた需要減、過度に拡大した炭鉱出荷価格と港湾価格との格差がこの先縮小する見通しを理由に、動力炭スポット価格が短期的に大きく下落するとみている。

 一方、コークス用炭価格に関しては力強く推移すると予想。中国北部の鉄鋼生産制限の解除に伴い、3月半ばには需要が上向く見通しを示した。また、海外では、豪鉄道会社オーリゾンによる管理方針の変更を受け、ボーウェン盆地における輸送能力の2,000万トン規模の低下と動力炭輸出の6%の減少が見込まれると指摘。これに伴い、柳林(山西省)産強粘結炭の18年の平均スポット価格に関する予想値を22%上方修正し、1トン当たり827元とした。19年に関しても17%引き上げ、同793元に設定している。

 BOCIは石炭予想価格の引き上げに伴い、石炭銘柄の18年の利益見通しを14-54%の幅で増額修正。エン州煤業(01171)と中国神華能源(01088)の株価の先行きに対して強気見通しを示した。うちエン州煤業に関しては内モンゴル自治区やオーストラリアの新規炭鉱に加え、買収した豪コール・アンド・アライド(C&A)の通期フルの寄与が18年の利益成長を支えると予想。中国神華能源については事業多角化により、石炭価格の下落に対して抵抗力が強い点を強気見通しの理由とした。一方、セクター全体のレーティング見直しにつながる可能性がある潜在リスク要因として、◇動力炭価格の予想以上の下落、◇ボーウェン盆地における輸送問題の迅速な解消――の可能性を挙げた。