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中国の2017年のGDP成長率は6.9%と、政府が目標とする水準を超える成長となりました。景気が堅調な要因には、外需のみならずITなど新規産業の好調さが挙げられます。ここ数年、中国政府からはAI(人工知能)に関する国家戦略が続けて発信されています。中国政府が国家規模で推進する『AI戦略』などにより、中国経済の成長エンジンは、これまでの製造業などからIT産業へとシフトしていくと見られます。
【ポイント1】次々と発信される中国の『AI戦略』
2015年には「中国製造2025」、2017年には「次世代AI発展計画」を発表
2015年5月、中国政府は、製造業大国から製造強国への転換を掲げて、次世代情報通信技術産業や⾼度数値制御⼯作機械、ロボット産業を重点分野に設定する「中国製造2025」を発表しました。
また、2017年7月には、「次世代AI発展計画」を発表しました。これは、2030年までに世界のAI産業におけるリーダー的存在となるために、音声認識やロボット、自動運転車、スマートフォンなど、関連産業を含めて1,500億米ドル規模のAI市場の創出を目指すものとなっています。
【ポイント2】習総書記がビッグデータ戦略の実施を指示
『AI戦略』の具体的な行動計画も発表
2017年12月8日、中国共産党は国家データ戦略の検討会合を開催しました。そこで、習近平総書記は、ビッグデータ戦略の実施と、デジタルインフラ施設の整備を進めることを指示しました。
また12月13日には、中国工業情報化部から2018~2020年における『AI戦略』の詳細が発表されました。具体的には、AI家電や自動運転車、ロボット、医療画像診断、翻訳など8つの項目にわたる主要製品の開発拡大、AIの基礎となるセンサーやチップの飛躍的な進歩、AI産業の支援システムの構築などが掲げられています。
【今後の展開】『AI戦略』の推進により、IT産業が中国の新しい成長エンジンに
12月18~20日に開催された中央経済工作会議では、2018年は経済安定を最優先事項としながら、「質の高い経済発展」を目指すことが決定されました。
1月18日に発表された中国の2017年の実質GDP成長率は+6.9%となり、政府が目標とする+6.5%前後を上回りました。景気が堅調な背景には、IT産業の好調が挙げられます。同日発表された2017年12月の鉱工業生産でも、素材産業などが下振れた一方、IT産業などは上振れました。政府主導の『AI戦略』の強い推進により、IT産業は今後の中国の経済発展の新しいエンジンになっていくと考えられます。