指値注文と、成行注文の使い分け

 最初に、売りについて話します。私の25年間のファンドマネージャー経験では、悪材料の出た銘柄は、迷わず成り行きで売るべきです。

 1日の制限値幅いっぱいまで下がり買い注文がなくなってしまう特殊な状態(ストップ安、売り気配)とならない限り、必ず売りが成立します。悪材料が出た銘柄で、売るか売らないか迷っているより、いったん売って頭をすっきりさせてから、投資判断を考え直すべきです。

 後から振り返って、「あそこであわてて売るべきでなかった」となることも、もちろんあります。それでも、私の経験では、「あそこで迷わず売ってよかった」となる可能性が高かったと言えます。

 ただし、好材料が出て上がっている銘柄については、あわてて売る必要はありません。上昇中の利益確定売りならば、「指値売り」でいいと思います。

 それでは、次に、買いについて話します。経験から言うと、強い買い材料が出ている銘柄について、最初の買いは、「成行」で出すべきです。私が10万株買いたいならば、まず1万株くらいは、成行で買ってしまいます。その後、値動きを見ながら買い増ししていきます。ただし、それは機関投資家の買い方です。

 100株だけしか買う資金がない場合は、あわてて高値づかみしないことが大切です。そういう場合は、想定より高値で購入する可能性があるかもしれない「成行買い」は避けるべきです。指値で買う方が良いと思います。

 ただし、買い材料の出ている銘柄に対して、現在の株価より下で買い指値をしても、買える可能性はほとんどありません。その場合は、現在の株価より高い価格で、買い指値をするべきです。

 先のA社の板状況で、100株買いたい場合について考えてみましょう。A社は、売り指値が薄く(一値に200~300株しか売り指値がない)、もし1万株くらいの成り行き買いが入ったら、簡単に株価が急騰してしまう状態です。

 ここでは、買ってもいいと思う上限価格で指値を入れるべきです。たとえば、1,021円まで株価が上がっても買いたいと思うならば、1,021円で買い指値するのです。もし、板状況が変わらなければ、1,007円で100株買えます。

 ただし、買い材料が出ている中で、1,007円の売りが残っていることは、まずないと考えるべきです。一瞬先に入る成行買い注文で、安値に入っている売り注文は取られてしまうでしょう。

 1,021円の買い指値が入った時点で、1,021円までの売り注文が残っていれば、その中の一番価格の低い売り注文にヒットして、買いが成立します。

 もし、1,021円より下の売り注文がすべて取られて、株価が一瞬で1,050円まで上がってしまえば、1,021円での買い注文は執行されません。指値注文として残ります。成行買いのように、想定より高値で購入する可能性がないので安心です。

 最後に、悪材料が出て下がってきた銘柄を、長期的には株価の反発を期待して買う場合は、あわてて買う必要はありません。下値に買い指値を入れて、下がってきたときだけ、買うのでいいと思います。

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2011年2月17日:「指値注文」「成行注文」の意味と使い方~超初心者コラム第2回~

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