指値注文・成行注文をどう使い分けるべきか、読者より質問をいただいています。今回は、私のファンドマネージャー時代の経験にもとづく、適切な使い分け方を解説します。
指値(さしね)注文とは
株式を売買するときの注文の出し方は、いろいろあります。もっともよく使われるのが、「指値注文」「成行注文」。この2つの注文方法を、しっかり理解して、適切に使い分けられるようにすることが大切です。
指値注文とは、「銘柄」「価格」「株数」を指定して、「買い」または「売り」の注文を出す方法です。取引時間中、1,002円の株価がついている以下のA社株に対し、「991円で100株の買い」とか、「1,019円で200株の売り」のように注文を出すことができます。
<A社株の取引時間中の板(いた)情報>
この銘柄に、991円で買い指値をした場合、株価が991円以下まで下がれば、買い約定(やくじょう)が成立します。株価が991円まで下がらなければ、買うことはできません。
この銘柄に、1,019円で売り指値をした場合、株価が1,019円以上に上がれば、売り約定が成立します。株価が1,019円以上に上がらなければ、売ることはできません。
<参考>板情報の見方
A社の取引時間中の板情報(いたじょうほう:売買注文の入り方)の見方を説明します。
・1,007円で100株、1,009円で300株の売り注文(指値注文)
・1,001円で300株、1,000円で9,000株の買い注文(指値注文)
・OVER…ここでは、1,024円以上の売り指値注文の合計株数
・UNDER…ここでは、991円以下の買い指値注文の合計株数
成行(なりゆき)注文とは
指値注文は、出しても約定が成立しない可能性があります。必ず売りたい、あるいは、必ず買いたい時は、指値注文ではなく、売り値・買い値を指定しない「成行注文」を出すべきです。
成行の売り注文を出すと、その時、場に出ている買い指値注文のうち、一番価格が高いものにヒットし、即座に売り約定が成立します。上に示した板状況のとき、100株の成行売り注文を出し、板が変わらなければ、1,001円で売れます。
ただし、自分が注文するより一瞬早く、大量の成行売り注文が入ることもあります。たとえば、一瞬先に9,400株の成行売りが入ったとします。すると、1,001円の300株、1,000円の9,000株、999円の100株まで、合計9,400株の買い注文は、先に取られてしまいます。すると、その後に執行されるあなたの100株の成行売り注文は、さらに下の998円の買い注文にヒットし、998円で売れることになります。
このように、成行の売り注文を出しても、そのときに見えている買い指値の一番高いもので約定するとは限りません。高速売買が普及している今日、悪材料が出た銘柄には、一瞬で大量の売り注文が出て、株価が急落します。注文を出した時に見えていた一番高い買い指値よりも、かなり下の価格で約定することもあることを、知っていてください。
成行の買い注文を出すと、その時、場に出ている売り指値注文のうち、一番価格が安いものにヒットし、即座に買い約定が成立します。上に示した板状況のとき、100株の成行買い注文を出し、板が変わらなければ、1,007円で買えます。
ただし、自分が注文するより一瞬早く、大量の成行買い注文が入ることもあります。たとえば、一瞬早く、1,000株の成行買いが入ったとします。すると、1,007円の100株、1,009円の300株、1,010円の100株、1,012円の400株、1,014円の100株まで、合計1,000株の売り指値注文は、先に取られてしまいます。
すると、その後で入れた成行の買い注文は、さらに上の1,015円の売り注文にヒットし、1,015円で買うことになります。
指値注文と、成行注文の使い分け
最初に、売りについて話します。私の25年間のファンドマネージャー経験では、悪材料の出た銘柄は、迷わず成り行きで売るべきです。
1日の制限値幅いっぱいまで下がり買い注文がなくなってしまう特殊な状態(ストップ安、売り気配)とならない限り、必ず売りが成立します。悪材料が出た銘柄で、売るか売らないか迷っているより、いったん売って頭をすっきりさせてから、投資判断を考え直すべきです。
後から振り返って、「あそこであわてて売るべきでなかった」となることも、もちろんあります。それでも、私の経験では、「あそこで迷わず売ってよかった」となる可能性が高かったと言えます。
ただし、好材料が出て上がっている銘柄については、あわてて売る必要はありません。上昇中の利益確定売りならば、「指値売り」でいいと思います。
それでは、次に、買いについて話します。経験から言うと、強い買い材料が出ている銘柄について、最初の買いは、「成行」で出すべきです。私が10万株買いたいならば、まず1万株くらいは、成行で買ってしまいます。その後、値動きを見ながら買い増ししていきます。ただし、それは機関投資家の買い方です。
100株だけしか買う資金がない場合は、あわてて高値づかみしないことが大切です。そういう場合は、想定より高値で購入する可能性があるかもしれない「成行買い」は避けるべきです。指値で買う方が良いと思います。
ただし、買い材料の出ている銘柄に対して、現在の株価より下で買い指値をしても、買える可能性はほとんどありません。その場合は、現在の株価より高い価格で、買い指値をするべきです。
先のA社の板状況で、100株買いたい場合について考えてみましょう。A社は、売り指値が薄く(一値に200~300株しか売り指値がない)、もし1万株くらいの成り行き買いが入ったら、簡単に株価が急騰してしまう状態です。
ここでは、買ってもいいと思う上限価格で指値を入れるべきです。たとえば、1,021円まで株価が上がっても買いたいと思うならば、1,021円で買い指値するのです。もし、板状況が変わらなければ、1,007円で100株買えます。
ただし、買い材料が出ている中で、1,007円の売りが残っていることは、まずないと考えるべきです。一瞬先に入る成行買い注文で、安値に入っている売り注文は取られてしまうでしょう。
1,021円の買い指値が入った時点で、1,021円までの売り注文が残っていれば、その中の一番価格の低い売り注文にヒットして、買いが成立します。
もし、1,021円より下の売り注文がすべて取られて、株価が一瞬で1,050円まで上がってしまえば、1,021円での買い注文は執行されません。指値注文として残ります。成行買いのように、想定より高値で購入する可能性がないので安心です。
最後に、悪材料が出て下がってきた銘柄を、長期的には株価の反発を期待して買う場合は、あわてて買う必要はありません。下値に買い指値を入れて、下がってきたときだけ、買うのでいいと思います。
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2011年2月17日:「指値注文」「成行注文」の意味と使い方~超初心者コラム第2回~
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