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 大統領選挙後に株価が大きく上昇するなど期待を背負って始まった『トランプ政権1年目』でしたが、当初掲げられた政策はあまり実現せず、成果は足元でようやく議会で可決された大型減税などに限られます。ツイッターの頻繁な更新や、重要閣僚の任用の遅れや相次ぐ辞任など、これまでの大統領にはないユニークさで話題となったトランプ大統領。今年抱えた多くの課題に如何に対処していくのか来年以降もその動向が注目されます。

 

【ポイント1】大型減税の可決は大きな成果

アメリカで重視されている考え方とは異なる政策などで物議をよんだ

■1月20日、ドナルド・トランプ氏が「アメリカファースト(米国第一)」を掲げて第45代大統領に就任しました。実施をうたった政策には、医療保険制度改革法(オバマケア)の見直し、大型減税、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、犯罪歴のある不法移民の強制送還やメキシコ国境への壁の建設などがありました。アメリカで重視されている自由の尊重の考え方と異なる政策や、他国の負担や犠牲が含まれる政策もあり、物議をかもしたものも少なくありません。

■これらは今のところあまり実現していませんが、12月20日に議会で可決された大型減税は大きな成果と言えます。これは、今後10年間で1.5兆ドルの減税を目指すもので、連邦法人税率は35%から21%へ引き下げられ、日本やドイツなどよりも低くなります。所得税では1兆ドル規模の減税となります。

 

【ポイント2】これまでの大統領にはないユニークさで話題に

閣僚の任用の遅れやロシアゲート疑惑により政権運営は難航

 

■『トランプ政権1年目』の特徴は、政策よりもむしろツイッターを通じた頻繫な情報発信と言う、これまでの大統領には見られなかったユニークさや、重要閣僚の相次ぐ辞任と言った話題性にあったとも考えられます。

■また、重要閣僚の任用が遅れ気味である他、トランプ大統領自身もロシアとの間に不明瞭な関係があったのではないかとされる、いわゆるロシアゲート疑惑の渦中にいることも、政権運営を難しくしています。

 

【今後の展開】1年目に抱えた多くの課題を如何に対処していくのか注目

■昨年の大統領選挙後には株価が大きく上昇するなど、期待を背負って始まった『トランプ政権1年目』でしたが、むしろ多くの課題を抱える1年になったと言えそうです。政策の実現は、議会の協力がないとすすめられませんが、今のところ与党・共和党がトランプ大統領の下で団結しているようには見受けられません。対外的にも、北朝鮮、中東などの地政学リスクにどう対処していくか、また、中国やロシアといった大国に対していかに優位性を保ち続けられるかと言った難しい課題を抱えています。アメリカの優れた政治的リソースを結集し、より良い社会・経済の構築を進めて欲しいものです。