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 米国の家計が保有する資産、負債の状況は、米連邦準備制度理事会(FRB)が四半期ごとに公表する「財務勘定」統計で捉えることができます。「財務勘定」とは、金融機関、法人、家計といった各部門の金融資産・負債の推移などを、預金や貸出といった金融商品ごとに記録したものです。直近2017年7-9月期の統計は、12月7日に公表されました。それによると、家計の『正味資産』は前期に続き過去最高を更新しました。

 

【ポイント1】家計の『正味資産』は8四半期連続で過去最高を更新

株価や住宅価格の値上りで総資産が拡大

■17年7-9月期末の米国家計の総資産は112.4兆ドルとなりました。同年4-6月期末に比べ1.9兆ドル、率にして1.7%の増加となります。一方、総負債は15.4兆ドル、前期末比0.2兆ドル、同1.2%の増加にとどまりました。その結果、総資産から総負債を引いた家計の『正味資産』は96.9兆ドルとなり、15年10-12月期以来8四半期連続で過去最高を更新しました。

 

【ポイント2】資産の7割が金融資産

株式、投信の保有比率が高い

 

■資産の内訳は、金融資産が78.9兆ドル、非金融資産が33.5兆ドル、うち不動産が27.4兆ドルでした。
■金融資産の内容を見ると、株式が17.3兆ドル、投資信託が8.3兆ドル、債券が3.9兆ドル(内訳は国債が1.3兆ドル、地方債が1.6兆ドルなど)、年金が22.9兆ドル、などとなっています。

 

【今後の展開】資産効果が復活、消費に前向きになってきた米国の家計

資産効果が復活してきた

 米国では、株価や住宅価格が値上がりし、家計の『正味資産』が増えると、消費が拡大し、貯蓄率は低下するという関係が認められます。これは、資産価値の上昇によって、所得の伸び以上の消費を促していることになり、資産効果と呼ばれています。この関係は2007年の住宅バブル崩壊後に一時的に崩れましたが、最近、復活してきました。 『正味資産』の拡大とともに、貯蓄率が落ちてきたのです。

米国の家計は消費に対して前向き

 直近7-9月期末の家計『正味資産』の対可処分所得比は6.7倍と過去最高となりました。これに対応する貯蓄率を過去のデータから求めると4%程度と推計されますが、実績値は3.3%でした。家計は『正味資産』の拡大を支えに、消費を積極的に行っていることになります。それだけ米国の家計は消費に前向きになってきたといえ、景気拡大の追い風になる可能性が高いと見られます。