また今回は「アメリカの」法人税が減税になるのですから、グローバルに展開しているハイテク企業にとってのメリットは相対的に小さいことになります。さらに今回の上院案には法人税の「代替ミニマム税」が盛り込まれています。これは設備投資や研究開発費に認められている減税のメリットが一定以上となった場合、減税額が制限されるというものです。ハイテク企業は相対的に設備投資や研究開発費を多く使っていますから、この条項はハイテク企業にとって不利ということになります。

 第3に、「税制改革審議の難航で株式相場が下落」という、メディアによる誤解を招く報道です。今年はここまでS&P500指数は18%上昇していますが、セクター別で見て最も上昇しているのは前述の通り、相対的に減税のメリットが小さいはずのハイテクで、36%上昇しています。逆に、相対的に「アメリカの」法人税減税からのメリットが大きいはずのエネルギーセクターはマイナス7%、通信セクターはマイナス10%です。

 要するに、今年株式相場は上昇していますが、税制改革法案の成立を期待して上昇してきたわけではないのです。よって審議が難航したからといって下落する余地など、そもそもほとんどないはずなのです。12月に入って上下院で税制改革法案が通過し、成立の見通しが立ってきたことでハイテク売り、エネルギー・通信買いという税制改革法案成立を織り込むような動きが少し見られましたが、全体としては税制改革による影響はまだまだという状況です。

 要するに、そもそもこれまで市場の税制改革法案に対する期待は高くなかったこともあり、そのメリットが本格的に経済・市場に表れてくるのはこれからです。そして忘れてはならないのは、この税制改革はトランプ政権にとって経済政策の第一歩であり、今後もインフラ投資やさらなる規制緩和などの重要政策が次々と控えているということです。

(2017年12月8日記)