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昨年6月、国民投票により欧州連合(EU)からの離脱(『Brexit』)を選択した英国。今年3月にはEUに離脱の通告を行い、2019年3月を期日として離脱交渉中です。交渉のポイントは、①EU離脱に伴う 清算金の金額、②英国在住のEU市民の権利保障、③アイルランド国境問題です。今月中旬のEU首脳会談では、離脱交渉が次のステージに進めるのか注目されています。
【ポイント1】今年3月に開始された離脱交渉はこう着状態
EU離脱に伴う清算金、EU市民の権利保障、アイルランド国境問題が優先課題
■『Brexit』は、離脱通告から約2年間(2019年3月まで)の離脱交渉中にあります。現在、『Brexit』の交渉では、①EU離脱に伴う清算金の金額、②英国在住のEU市民の権利保障、③アイルランド国境問題が優先課題となっています。ただし、いずれについても英国とEU側の主張には隔たりがあり、10月までは離脱交渉にほとんど進展が見られませんでした。
【ポイント2】清算金について非公式に合意か?
アイルランド国境問題では物理的障壁の回避が求められている
■11月、一部報道において英国とEUとの間で①EU離脱に伴う清算金の金額について非公式の合意があったと報じられました。その金額は、報道機関によって異なるものの、9月にメイ首相が示していた200億ユーロの倍以上(400~550億ユーロ程度)と言われています。
■③アイルランド国境問題では、北アイルランドとアイルランドの国境管理および税関チェックの回避がポイントとなっています。アイルランドは、EU離脱に伴う物理的な障壁を回避するように求めています。一方、与党・保守党と閣外協力している民主統一党は、こうした特別扱いに反対しており、メイ政権の『Brexit』の交渉を難しくしています。
【今後の展開】12月のEU首脳会談で「十分な進展」の判断を得て次のステージへ
■12月4日に行われたメイ首相とユンケル欧州委員長の会談では、①EU離脱に伴う清算金や②EU市民の権利保障については前進したとされる一方、③アイルランド国境問題は合意に至りませんでした。合意に向けた調整は、今週末ないしは12月14~15日のEU首脳会談直前まで行われると見られます。EU首脳会談で『Brexit』の交渉に「十分な進展」があると判断されれば、新しい貿易協定の議論や、EU離脱後の約2年の移行期間の設定など、2018年以降の交渉は次のステージに進むと見られます。離脱交渉にこうした新しい貿易協定や移行期間の設定の進展が見られれば、英国経済や通貨ポンドの下支え要因となりそうです。