11月20日:資産管理ビジネスに対する規制を強化、政府部門を跨いだ規定「一元化」が実現

 中国人民銀行(中央銀行)が17日、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会、国家外貨管理局と共同で、「金融機関の資産管理業務の規範化に向けた指導意見(草案)」を発表した。これは多種多様な資産管理ビジネスをターゲットとした全方位的な規制強化策であり、複数の政府部門を跨いだ関連規定の “一元化”を意味する。システミックリスクを抑制すると同時に、金融資源を実体経済に貢献させようとする政府指導部の決意が強く伺える内容となっている。

 中国では資産管理ビジネスが急速に拡大しており、BOCIによれば、銀行、信託会社(トラスト会社)、オープン型投信(ミューチュアルアンド)、プライベートファンド、証券会社、ファンド子会社、保険会社の資金管理残高は2016年末時点で、それぞれ29兆1000億元、17兆5000億元、9兆2000億元、10兆2000億元、17兆6000億元、16億9000億元、1兆7000億元を記録した。ただ、高利回りを追求する中でのレバレッジ拡大や、多層的あるいは入れ子構造の投資手法を通じた規制逃れ、管轄局ごとの規定の違いを突いた規制逃れ(規制アービトラージ)といった問題が発生。実際にマクロ、ミクロの両面から金融リスクが高まっていたという。

 規制アービトラージが広がった一因は、政府各部門が別々の規定を運用していたこと。新たに発表された「指導意見」においてはこうした現状を改め、中国人民銀行や、銀行、証券、保険業の管理監督部門などが共同で、包括的なルールを導入する。また、内閣に当たる国務院の下に、新たに「金融安定発展委員会」を設けるという動きも、部門を跨いだ規定の一元化を目指す政府の意向の表れとされている。

 一方、「指導意見」の規制内容を見ると、主に標的となっているのは、規制アービトラージや、元本償還と利息払いを絶対的に保証するという中国独自の慣習「剛性兌付」など。具体的には以下のような項目が並ぶ。◇「剛性兌付」の排除、◇負債比率の制限、◇多層的あるいは入れ子状の投資構造の排除、◇基準外の債券投資に関する規制強化、◇流動性リスクの回避と資金プールの規範化、◇リスク準備金規定の強化、◇統計基準の一本化――。このうち、例えばリスク準備金に関しては「管理手数料の10%」といった具体的な数値も設定された。また、「指導意見」の発効日は特に決めず、その代わりに「19年6月末までの期間を“過渡期”にする」と規定。この間に新たに設定する資産管理商品に関しては「指導意見」に従うことを義務付けるとした。

 BOCIは政府当局が中立的な金融政策を維持する半面、金融関連の規制強化を継続する可能性を指摘している。特に資産管理ビジネスやシャドーバンキング(影の銀行)システム、ネットファイナンス、非金融企業による金融業務などが標的となる見通しという。また、今回の「指導意見」の実施により、銀行の資産管理業務がかなりの圧力に直面する可能性を指摘。相対的に透明性が高いオープン型投信ビジネスを有望視している。