運用は芸術と似ている

◆ファンドマネジャーと社長業と、お忙しい中でもSNSでは朝から深夜までつぶやいていらっしゃいますね。

 もともと私は書くことが好きなので、楽しいことです。この15年間、毎年毎年これ以上忙しくはならないだろうと思っているんですが、確かに仕事の時間はどんどん増えている気がします。あんまり忙しいという言葉は使いたくないんですけどね。

 時間があれば、もう少し趣味のピアノの練習をしたいですね。実は私はピアノサークル「ついぴの会」を主催しています。北海道から沖縄まで22カ所ぐらいの拠点がある、日本で最大のピアノサークルなんですよ。元々「ツイッターピアノの会」だったのですが、いつからか「ついぴ」って言われるようになって。趣味の仲間との時間はとても大切です。

 来年2018年1月に「ショパン国際ピアノコンクールinASIA」というアマチュアのピアノコンクールが開催されるのですが、日本で行われる全国予選を通過すれば、出場できるのです。先日、地区予選は通ったので、次は全国を突破、そしてアジア大会へと考えています。

◆プライベートの喜びが実現するといいですね。では運用の喜びとは?

 運用もピアノと一緒で私にとっては、「表現の場」なのです。運用の結果を英語では「パフォーマンス」と言います。成果、業績という意味の「リザルト」とは表現しません。

 ピアノの演奏も「パフォーマンス」と言います。ダンスや絵、写真、音楽も「パフォーマンス」ですね。だから運用の結果というのはある種、芸術的なアウトプット、ひとつの芸術作品であると考えています。芸術的な活動として、結果を出して、それを世に問うという側面があるわけです。

 芸術作品だと考えると、結果それ自体もとても大事なのですが、どういう歩みをしながら高い結果を出していくのかというプロセスも重要になってきます。

 マーケットという非常に横暴な支配者がいますが、絶対的な存在です。

 たとえるなら、マーケットという非常に気まぐれで横暴な歌手がいて、それに付いて、いかに良い楽曲を伴奏できるかを試されているのがわれわれです。とてつもなく素晴らしい歌を歌ったと思ったら、めちゃくちゃな歌を勝手に歌い出す。最大のボスであり、最大のパートナーであり、最大の敵というマーケットに向き合って、素晴らしいパフォーマンスを上げていくことが、やりがいであり、喜びにつながるのでしょう。

◆ひふみ投信にはファンが多いようですね。

 金融市場は、市況に応じて、ほとんどの株価がいっせいに下がるときがあります。でも、そんな下げ相場であっても、ひふみの長期的な視点を理解してくださり、信じて持ち続けてくださるお客さまが多くいらっしゃいます。 以前、スノーピークの山井社長が、ひふみ投信を「コミュニティファンド」だと評してくれました。うれしかったですね。

 ファン(お客さま)を集めて、ファンの度合いが高くなるから「ファンド」になる。逆に不安の度合いが高くなると「不安度」にもなるのですけどね。

 ひふみ投信は、私にとって起業を志してからの15年間の想いが詰まった商品です。これからも夢は大きく、米国フィデリティのマゼランファンド(※)のような存在を目指しています。

※1962年スタート。1977年から1990年まで運用にあたったピーター・リンチなどの活躍によって、資産規模は最大で約1,100億ドルに達した。

 米国の投資信託市場も、現在の規模に成長するまでにはさまざまな紆余曲折がありましたが、マゼランファンドの成長によって、大きくイメージが改善されたという歴史を持ちます。われわれも、お客さんから「ひふみ投信で運用したから、子供を大学に上げることができた」「家を買うことができた」などと言われる存在になれるよう、さらなる成長を目指したいと考えています。

◆写真の答え◆

答えは「牛」と「熊」。英語で言えば「ブル」と「ベア」ですが、相場の強気を示す「ブル」、弱気を示す「ベア」が、隠されていたのです。

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●今回の取材先

藤野 英人(ふじの・ひでと)さん

レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役社長
最高投資責任者

1966年富山県生まれ。1990年早稲田大学法学部卒業、日米の大手投資運用会社でファンドマネジャーを歴任、2003年レオス・キャピタルワークスを創業。株式投資信託「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」を運用し、高いパフォーマンスで受賞歴多数。投資教育にも注力しており、JPXアカデミー・フェロー、明治大学商学部兼任講師も務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に『ヤンキーの虎-新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社)、『投資レジェンドが教える ヤバい会社』(日経ビジネス人文庫)。