5年前のこのコラムで、「良いビジネスを安く買う:アップルとグーグル」と題し、どちらの株式に投資すべきかについて記しました。市場には様々なニュースが飛び込んできて、株式というのは短期的にはそのようなニュースに振り回される傾向がありますが、5年も経てば相対的にはそのようなニュースの影響は小さくなり、逆に本来ビジネスの持つ価値がより正確に株式に反映されるものです。我々が運用するファンドでも常に、その時のニュースに惑わされることなく、そのビジネスの3年から5年先の姿を見越して投資する方針を取っています。

 「安く買う」というのはバリュー投資の基本ですが、バリューだけを見ていると質の悪いビジネス、いわゆるバリュー・トラップに引っ掛かるリスクがあります。一方で良いビジネスばかり追いかけていると高値を掴む可能性が高くなります。それでは「良いビジネスを安く買う」という方針を追求している我々はどうしているかというと、良いビジネスが短期的な理由で安くなっている機会を狙うのです。そのような観点から我々が5年前に目を付けたのがアップルとグーグルでした。

 アップルやグーグルのような良いビジネスが安く提供されているような状況は、滅多にあるものではありません。しかし5年前は両社共に、「一株利益50円で年率20%で成長している株が610円で、しかもそのうち100円以上は現金」という状況だったのです。当時はグロース(成長)を追い求める投資家が、両社の巨大化と共に見切り売りを進める一方で、バリュー投資家がまだ積極的には買い出動していない(通常バリュー投資家は急いで飛び付くような買い方はしません)、いわばグロースからバリューへのバトンタッチの段階であったことによって「良いビジネスを安く買う」機会が提供されていたのです。

あれから5年間、アップルの株価が配当の再投資込みで82%の上昇にとどまったのに対してグーグル(2015年に社名をアルファベットに変更)は189%の上昇となり、当時予想をお示しした通り、グーグルへの投資がアップルを大きく上回る結果となりました。どうしてこのような差が出たかというと、これも5年前にお示ししていた理由の通りであり、グーグルの方が「金のなる木」に近い良いビジネスであったから、またグーグルはビジネスによって生まれたキャッシュフローを配当で還元するのではなく、再投資することによってさらに高いリターンに結び付けていったからです。