今週の日本株は先週の石破ショックを克服。一時、1ドル=149円台に到達した円安進行もあって反転上昇に期待がかかる1週間になりそうです。

 先週は9月27日(金)の自民党総裁選挙で株式の値上がり益など金融所得課税強化に言及していた石破茂氏が大逆転で新総裁に選出されたことで、週明け30日(月)、日経平均株価(225種)は1,910円(4.8%)も急落。

 しかし、石破氏が従来の主張を大きく変え、円安株高につながる発言を繰り返す「手のひら返し」を見せたことで、市場は次第に落ち着きを取り戻しました。

 10月1日(火)の臨時国会で新首相に選出された石破氏は早速、2日(水)に日本銀行の植田和男総裁と会談し「追加利上げをするような環境にない」と発言。

 この発言を受けて3日(木)の為替市場では1ドル=147円20銭台まで前日比3円近い急速な円安が進行しました。

 日経平均株価の4日(金)終値は前週末比1,193円(3.0%)安の3万8,635円で、週間では大幅下落となりましたが、石破新首相の株価に配慮した発言で底割れ危機は回避しました。

 週間の業種別騰落率ランキングでは中東情勢緊迫化による原油高を受け、資源開発会社の石油資源開発(1662)が前週末比11.5%も上昇するなど鉱業、石油・石炭製品セクターが大幅なプラスでした。

 石破発言にもかかわらず中東情勢緊迫化によるインフレ懸念で日米の金利が上昇し、銀行業、保険業といった金融セクターもプラス圏を維持しました。

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が新たな円建て社債の発行を計画中という報道で、大手商社に続く投資対象が日本の銀行・保険株になるのではないかという思惑も影響したようです。

 米国では重要な雇用・景気指標の発表が相次ぎましたが、景気低迷を示すものもあれば堅調な雇用情勢を示すものもあり、まちまちの結果に。

 最も注目された4日(金)の9月雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比25.4万人増と予想を大幅に上回りました。失業率も4.1%に低下し、インフレに直結する平均時給の伸びも前年同月比4.0%増に加速。米国市場では2024年内の大幅な追加利下げに対する期待感が縮小しました。

 ただ堅調な雇用情勢を素直に好感して米国株は4日も値上がりし、機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は前週末比0.22%上昇。景気敏感株の多いダウ工業株30種平均はまたしても史上最高値を更新しました。

 米国の大幅利下げ期待が後退すると円安が進むため、日本株にとっては朗報です。4日夜のニューヨーク為替市場では一時1ドル=149円台に突入し、終値でも1ドル=148円60銭台まで円安に振れました。

 これを受けて4日夜の日経平均先物価格(12月期近)は前日比1,000円高の3万9,560円まで急騰しており、週明け7日(月)以降の日経平均株価4万円台回復も視野に入りました。

 今週は10月9日(水)夜、0.5%の予防的な大幅利下げを決めた前回のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録が発表されます。

 10日(木)には米国の9月CPI(消費者物価指数)、11日(金)には9月PPI(卸売物価指数)も発表。先週、労働市場の堅調ぶりが明らかになった米国でインフレが再燃すると、株価の急落もありそうです。

 日本株市場ではイオン(8267)セブン&アイ・ホールディングス(3382)など流通、小売、外食系に多い2月期決算企業が中間決算(2024年3-8月期)を発表。インバウンド(訪日外国人)需要や個人消費の拡大で良好な決算を発表する企業の続出に期待が持てそうです。

先週:石破新首相の「利上げなし」発言と堅調な米国雇用統計で円安進行。中国株の急騰はどこまで続く!?

 先週1日(火)、イランがイスラエルに向けて180発以上のミサイルを発射する大規模攻撃を実施。

 一方、イスラエルはイランの支援を受けたレバノンの武装組織ヒズボラに対する地上軍事侵攻を開始しています。

 両国の戦闘が大規模な戦争につながる危機が高まっていることから、米国産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油(米国の西テキサス地域で産出される良質な原油)は週間で前週末比9.2%高となる1バレル=74.4ドル台まで上昇しました。

 原油価格の上昇は資源会社や石油元売り企業の株価にとっては追い風です。しかし原油価格が上昇すると、沈静化した米国の物価が再び上昇に転じるなど世界的なインフレ再燃につながりかねません。

 先週、目を引いたのは9月24日(火)に中国の中央銀行に当たる中国人民銀行が短期金利の引き下げなど大規模な景気刺激策を発表したことで始まった中国株の急騰です。

 先週10月1日(火)からは国慶節の大型連休が始まり中国本土の株式市場は休場入り。

 取引の続いた香港市場の株価指数・香港ハンセン指数は先々週の前週末比13.0%高に続いて先週も10.2%高と急騰。1年8カ月ぶりの高値をつけています。

 これを受けて休場中の中国本土株に連動する日本市場の「One ETF 南方 中国A株CSI500」(2553)というETF(上場投資信託)が国慶節明けの中国本土株続伸を見越して4日(金)にストップ高。前週末比の市場価格がなんと13倍以上も値上がりする異例の事態も発生しています。

 国慶節が終わって取引が再開する8日(火)以降は、中国本土株や日本国内の中国株ETFが乱高下して市場が混乱するかもしれません。

 米国では、10月1日(火)に発表されたISM(全米供給管理協会)の9月製造業景況指数が市場予想を下回り6カ月連続で活動縮小が続いていることが判明。

 しかし同日発表の8月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数は予想外に増加し、2日(水)に給与計算代行会社ADP(オートマチック・データ・プロセッシング)社が発表した9月民間雇用統計も予想を上回る増加となりました。

 そして4日(金)の9月雇用統計も予想を大きく上回り、一時は失速が危ぶまれた米国の労働市場が堅調に推移していることが判明しました。

 先週の日本株では海運株が業種別下落率でワーストでした。米国やメキシコの湾港労働者のストライキが解決し、船賃上昇期待が後退したことが原因です。高配当株としても知られる主力の日本郵船(9101)は前週末比6.5%安でした。

 中東の地政学的リスク台頭で、半導体検査装置のレーザーテック(6920)が9.4%安、トヨタ自動車(7203)が6.0%安となるなど、円安が進行したにもかかわらず半導体株や自動車株もさえませんでした。

今週:中東情勢や米国FOMC議事録、9月CPIに注目!日本株は小売系内需株の決算発表が追い風!?

 今週は米国の雇用情勢が堅調で利下げ期待が後退しているだけに、9月18日に0.5%の大幅利下げを決めたFOMCの議事録の発表に注目が集まりそうです。

 先週30日(月)には、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「利下げを急ぐ必要はない」と講演会で発言。

 10月9日(水)夜発表のFOMC議事録でもその方針が確認されると、現状2024年中にさらに0.5%の利下げが行われることを織り込んで上昇してきた米国株が調整する可能性もあるでしょう。

 翌10日(木)には米国の9月CPIも発表されます。前回8月CPIでは変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアCPIが市場予想をわずかに上回る前月比0.3%の伸びでした。いったん上がるとなかなか下がらない住居費の高止まりが原因です。

 今週発表の9月CPIでも物価高の高止まりが続くかどうかに注目です。

 国内では8日(火)に8月の毎月勤労統計調査が発表。物価上昇を考慮した実質賃金は夏ボーナスの増加や物価高の伸び鈍化を受けて、6月、7月と2カ月連続でプラスに転換しているだけに今回も期待が持てそうです。

 特に今週は賃上げで旺盛な個人消費を受けて業績好調な小売・流通業に多い2025年2月期決算企業の中間決算がピークを迎えます。

 9日(水)の取引終了後にはイオン(8267)や吉野家ホールディングス(9861)、10日(木)にはセブン&アイ・ホールディングス(3382)、11日(金)にはビックカメラ(3048)など株主優待株としても人気の高い内需企業が相次いで決算発表します。

 緊迫する中東情勢が心配ですが、衆議院の解散総選挙も前倒しされ10月27日(日)に投開票が行われる予定。

 選挙は株高につながりやすいものの、石破新首相は前言撤回が目立ちすぎるため、支持率もそれほど跳ね上がっていません。総選挙で自民党が大敗して政治的な混乱・停滞が続くようだと日本株にとって非常にネガティブです。

 ただ、株価や為替に関しては石破新首相が市場に寄り添った発言を行うことで、投資家の信頼を勝ち取ることに期待したいところです。