今週の日本株は先週27日(金)に選出された石破茂自民党新総裁の経済政策に対する不安感から暴落に近い状況になりそうです。

 27日夜間に取引された日経平均先物(12月期近)は前日比2,410円も値下がり。27日の取引時間中、日経平均株価(225種)は4万円台到達目前でしたが、今週は3万7,000円台での攻防になりそうです。

 27日夜のニューヨーク為替市場でも1ドル=142円20銭台まで円高が進んでおり、週明け30日(月)以降1ドル=130円台に突入した場合、日本株の下落に拍車がかかる恐れもあります。

 27日の自民党総裁選では一回目の投票でアベノミクスの株高円安政策を継承する高市早苗現経済安保相がトップになりました。積極財政や反追加利上げを掲げる高市氏が新総裁になることを好感して日本株は急上昇。

 先週の日経平均株価(225種)は27日だけで前日比903円(2.3%)上昇し、週間では前週末比2,105円(5.6%)高の3万9,829円で引けました。

 しかし、日本株の取引が終了したあとに結果が判明した二回目の決選投票では、なんと二位の石破茂氏に議員票が集まり大逆転。高市氏の保守的すぎる政治姿勢や旧安倍派の「裏金」議員が数多く推薦人に名を連ねていたことが嫌われたようです。

 石破氏は株式の売却益など金融所得課税の強化や法人税増税など株価には厳しい政策に言及していたため、27日夜の日経平均先物急落につながりました。

 新総裁就任早々「石破ショック」といえる株価暴落の洗礼を受けた石破氏は10月1日(火)の臨時国会で新首相に指名される予定です。

 新総裁選出後の記者会見では「賃上げと投資の成長型経済を実現」「デフレ脱却を確実なものにする」と述べ、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を創設し「貯蓄から投資へ」の流れをつくった岸田文雄政権の経済政策を継承することを強調しています。

 石破新首相が今後、日本の株式市場や為替相場に配慮した姿勢を打ち出し、市場の警戒感を打ち消すことができるかどうかに注目が集まります。

 28日(土)のマスコミの組閣人事に関する報道によると、第一回目の投票でトップだった高市氏は自民党総務会長の打診を固辞し、入閣もしない見込みのようです。

 27日(金)取引時間中の株価急騰につながった「高市トレード」の巻き戻しで市場には失望感が漂いそうです。

 週末に大混乱に陥った日本株とは違い、米国では機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週末比0.62%上昇。26日(木)には底堅い雇用情勢を受けて史上最高値を更新しています。

 しかし、米国では今週、10月1日(火)にISM(全米供給管理協会)の9月製造業景況指数、2日(水)に給与計算代行会社ADP(オートマチック・データ・プロセッシング)社の9月民間雇用統計、3日(木)にISM9月非製造業景況指数、そして4日(金)には9月の雇用統計が相次いで発表になります。

 前々回の8月、前回9月はこれら米国経済にとって非常に重要な雇用・景気指標の落ち込みが目立ち、日米の株価が急落。為替市場では円高が加速しました。

 石破ショックで日本株の混乱が続きそうなだけに、これら米国経済指標の結果次第ではさらに株価が大きく下落するリスクに注意が必要です。

先週:自民党総裁選の高市氏躍進で株価急騰も石破氏大逆転で日経平均先物2,000円安。日本株大ピンチ!

 先週は深刻な不動産不況に苦しむ中国の中央銀行に当たる中国人民銀行が24日(火)、短期金利や住宅ローン金利の引き下げなど大規模な景気刺激策を発表。

 26日(木)には中国共産党も年率5%の経済成長達成に向けて新たな財政支出を行うことを表明しました。

 これを受けて上海総合指数が前週末比12.8%も急騰するなど中国株が急上昇。日本でも中国での売上比率が高い工作機械メーカーのファナック(6954)が12.0%高、化粧品メーカーの資生堂(4911)が16.8%高となるなど中国関連株が盛り上がりました。

 25日(水)に米国の半導体メモリーメーカーのマイクロン・テクノロジー(MU)がAI(人工知能)関連機器の販売好調で市場予想を上回る2024年9-11月期の業績見通しを打ち出したこともあり、半導体関連株も世界的に反発しました。

 日本株でもAI半導体向け検査装置の売上比率が高いアドバンテスト(6857)が前週末比14.5%高となるなど、半導体株が大幅に上昇しました。

 さらに防衛力強化に積極的な高市氏が自民党新総裁に就任するのではないかという期待感もあり、三菱重工業(7011)が15.2%高、川崎重工業(7012)が12.7%高となるなど防衛関連株も急騰しました。

 米国では24日(火)の民間調査会社コンファレンス・ボード発表の9月消費者信頼感指数が労働市場の減速や長期化する物価高の悪影響で3年ぶりの大幅な落ち込みとなりました。

 しかし、中国の大規模な景気刺激策やAI向け半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)の急騰(週間では4.66%上昇)もあり、9月18日(水)終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)での0.5%大幅利下げに沸く米国株はイケイケの状況をキープ。

 26日(木)の週間新規失業保険申請件数が4カ月ぶりの低水準になったことや半導体株マイクロン・テクノロジーの強気の業績見通しもあり続伸しました。

 27日(金)の8月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)では変動の激しい食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターが前月比0.1%上昇で予想を下回るなど、景気減速や個人消費の低迷が少し心配になるほど低下。

 しかし、来たる11月6~7日に開かれるFOMCでも景気下支えのため、再び0.5%の大幅利下げが行われるのではないかという期待感も台頭し、米国株は非常に明るいムードに包まれました。

 今週30日(月)には米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が全米企業エコノミスト協会の会議で講演しますが、11月FOMCで0.5%利下げに言及するかどうか注目です。

 ただ、米国の景気・物価指標の減速はさらなるドル安円高につながりかねないため、日本株にとっては米国株以上にネガティブです。

今週:石破氏の発言軌道修正や人事に期待!8月、9月に続き10月第一週も米国景気後退懸念で株価急落再来!? 

 今週一番の注目ポイントは、自民党新総裁に選出された直後に日経平均先物価格が2,000円以上急落するなど、株式市場から徹底的に嫌われた感のある石破氏の発言や行動以外にないでしょう。

 10月1日(火)の新首相就任や組閣人事の過程で、株価急落を防ぐ発言や人事、対策をどのように打ち出すか、それとも打ち出さないのかに注目が集まります。

 米国では非常に重要な景気・雇用指標の発表が相次ぎます。

 特に注目なのは10月1日(火)の9月ISM製造業景況指数。前々回の7月分は8カ月ぶりの低水準だったことで8月上旬の米国株急落の前兆になりました。前回8月分もわずかに上昇したものの、好不況の境となる50を5カ月連続で下回り、その週の米国株の大幅下落の号砲になりました。

 4日(金)には9月雇用統計も発表。9月6日発表の前回8月雇用統計は、失業率が4.2%と5カ月ぶりに前月から低下したものの、非農業部門新規雇用者数が前月比14.2万人増と市場予想を下回り、米国の労働市場がかなり急ピッチで減速していることが明らかになっています。

 その他、1日(火)には8月雇用動態調査(JOLTS)求人件数、2日(水)には前回落ち込みの激しかった9月ADP民間雇用統計、3日(木)には旺盛な個人消費を受けて好調が続く9月のISM非製造業景況指数なども発表されます。

 8月、9月に上記の一連の景気・雇用指標が発表された週は米国株、日本株ともに大きく急落しました。「二度あることは三度ある」ということわざもあるので、今週も注意が必要でしょう。

 米国でも日本時間の2日(水)午前には、11月5日(火)に迫った米国大統領選を前に民主党・共和党の副大統領候補が討論会を行います。

 9月10日に行われたハリス副大統領とトランプ前大統領の討論会はハリス氏が優勢だったという見方が大勢を占めました。今回、過激で差別的な言動に批判が集まる共和党副大統領候補のバンス上院議員に対して民主党副大統領候補のウォルズ・ミネソタ州知事がどの程度、優位に立てるかに注目です。

 日本では1日(火)、日本銀行が景気の現状と先行きを調査した年4回の短観(全国企業短期経済観測調査)を発表します。

 7月発表の前回短観では大企業製造業の景況感が2期ぶりに改善。しかし、その後、急速な円高が進んだこともあり、外需株の多い製造業部門の景況感悪化が確認されると日本株にとってネガティブでしょう。

 石破ショックで株価がどこまで下がるのか、今週中に下げ止まるのかが最大の焦点になりそうな1週間です。