まだまだ高い米CPIエネルギーと原油相場

「前年同月比」は、多くの経済指標で参照されています。当月の実数値が前の年の同じ月と比べてどのように変化したか、直近1年間でどれだけ成長したか、を知るために用いられています。このため、前年同月比で見えなくなっている点があります。長期視点のトレンドです。

 例えば、今と2年前、今と5年前、今と10年前などを、前年同月比で追うことはできません。

 社会全体が成長し続けていた時代では、前年同月比を追い続ける意味はあったかもしれませんが、今のように経済成長を継続することが難しくなっている(一部では経済的な成長を続けることを否定する企業さえある)時代においては、前年同月比に注目し続けることは、すでに限界を迎えているのかもしれません。

 こうした背景がある上で、米国のCPI(消費者物価指数)のエネルギー部門の実数値とNY原油先物価格の推移に注目します。二つの推移における山と谷のタイミングは、おおむね同じだと言えます。特に近年は、ほとんど同じように動いていることが分かります。

図:米CPIのエネルギー(実数値)とNY原油先物(月足 終値)

 出所:米労働省およびInvesting.comのデータより筆者作成

 米CPI(エネルギー)の足元の水準は、長期視点で見ると、大変に高いことが分かります。

 足元、原油価格が安くなってきた、インフレが鎮静化しつつある、と言われながらも、長期視点ではまだまだ、高いのです。米CPI(エネルギー)や原油価格は、安いのか、高いのか、という問いについては、短期視点や前年同月比で見ると安いが、長期視点で見ると高い、という返答になるでしょう。

 上の図から分かるとおり、原油価格が1バレル当たり30~40ドルあたりで長期間推移しない限り、安定したインフレ鎮静化は実現できません。では、原油相場はそうした水準で推移する可能性はあるのでしょうか。