1 ENEOSホールディングス(5020・東証1部)
▼どんな銘柄?
石油元売りの国内トップ企業で、国内シェアは約5割となっています。銅などの金属事業も手掛けています。原油相場の水準によって在庫の評価損益の変動が大きく、株価は原油相場との連動性が強い傾向があります。
配当利回り水準が高いだけでなく、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)でみても株価の割安感が強いといえる銘柄です。
2020年6月に、これまでのJXTGホールディングスから社名変更しています。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は1,131億円の赤字となりました。前期比では6,501億円の損益悪化となっています。
原油市況が月末にかけて大きく下落したため、在庫評価損が2,098億円発生し、赤字に転落しました。在庫影響を除いたベースでは967億円の黒字で、前期比81.2%減益となっています。
石油製品・石油化学製品のマージン悪化が大きく響きました。2021年3月期営業利益は1,100億円の黒字転換見通しで、在庫影響を除いたベースでは1,650億円、同70.6%増益の見通しです。石油製品のタイムラグ解消によるマージンの改善を見込んでいます。
▼ここがポイント
評価ポイントは、成長に向けた積極的な投資を行う一方で、株主還元も高水準を維持するなど、バランスの取れた財務戦略を進めていることです。株主還元としては、総還元性向50%以上、下限配当22円と設定しています。
また、今年の10月には大阪製油所の精製機能を停止する予定となっており、その後の石油製品の需給バランス改善も期待されます。
2 コスモエネルギー(5021・東証1部)
▼どんな銘柄?
石油元売り大手の一角で、国内シェアは11%程度とみられます。
アブダビ政府系の投資会社が筆頭株主となっている他、2017年2月より、キグナス石油と資本業務提携を行っています。石油開発事業なども手掛け、中東地域における日系企業のオペレーター会社としては最大規模のようです。原油生産量は約5.1万バレル/日です。
なお、風力発電能力も国内で第3位の規模となっています。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は139億円で前期比85.3%減益となりました。在庫評価損が522億円発生したことが大幅減益の主因ですが、ENEOSと同様に、原油価格急落に伴うマイナスのタイムラグ(製品販売価格の下落が先行)発生も響きました。
2021年3月期営業利益は345億円で同2.5倍の見通しです。在庫評価を除いたベースでは減益を見込んでいます。石油事業は前期のタイムラグ解消で大幅増益の見通しですが、資源価格の下落による石油開発事業の落ち込みを想定しています。
▼ここがポイント
会社側の原油価格前提は30ドル水準ですが、現在は40ドル程度での推移となっています。現状の傾向が続けば、資源開発事業の上振れが期待でき、全体業績も上方修正の可能性があるといえます。
また、再生可能エネルギー事業では、陸上風力のみならず、秋田港や能代港などにおける洋上風力発電の事業開始も2022年には開始予定となっています。
3 熊谷組(1861・東証1部)
▼どんな銘柄?
準大手ゼネコンの一角。民間建築の割合が約6割となっています。筆頭株主は住友林業となっており、共同でアジア地域における不動産開発事業に着手しています。
微生物を利用してCO2からエチレンを生産する技術を開発中、CO2排出量の削減効果に期待がかかります。前期まで連続しての増配を継続中でもあります。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は254億円で前期比3.9%減益となりました。完成工事高は増加しましたが、不採算工事の発生によって利益率が低下しました。
受注高は土木分野における鉄道分野での反動減、建築分野における医療・福祉施設、住宅の反動減などで同28.4%の減少となっています。
2021年3月期は豊富な受注残の順調な消化によって、売上高・利益ともに横ばいを予想しています。営業利益は255億円で同0.2%増益の見通しです。
▼ここがポイント
不採算案件の一巡、土木分野を中心とする引き渡し工事の増加に伴うマージン改善などから、会社側の収益計画はやや控えめと考えられます。
ここまで連続増配を実施しており、業績上振れは増配につながる可能性が高いことは注目されます。
ちなみに、前期の受注は減少していますが、前期末受注残高は5,431億円で売上高の1年分を優に超える水準があります。準大手ゼネコンの中では相対的にPER水準が割安であることも注目されます。