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6月の日本株:月前半に買い先行、その後は上値重い展開に
6月の日経平均株価は1.9%の上昇と、上昇率は前月と比べて鈍化しましたが、3カ月連続での上昇となっています。
月前半に買い優勢となり、一時は2万3,185円まで上昇。コロナショックによる急落が始まる直前の2月21日終値に、あと200円の水準まで迫りました。その後の調整場面では25日移動平均線が下支えとなって下げ渋りましたが、月末にかけては同平均線水準を下回ってきています。
国内休業要請の段階的解除の動きや米中摩擦に対する過度な警戒感の後退、為替市場での円安進行が、月初めの買い材料とされました。想定以上に改善した米雇用統計を受けて、一段高となる場面もみられました。
ただ、その後は2万3,000円台回復による達成感もあって、徐々に利食い売りが優勢となりました。国内外でのウイルス感染第2波に対する警戒感なども重しとされました。
15日に2万1,529円まで下落した後は、FRB(米連邦準備制度理事会)の広範な社債買い入れ開始発表といった金融政策の拡充で下げ渋っています。
個別では、国内におけるデジタル化投資の拡大を手掛かりに、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連が賑わいました。GMOクラウド(3788)やチェンジ(3962)、オプティム(3694)などの中小型情報通信株が上昇率上位となっています。
また、東京エレクトロン(8035)など半導体製造装置関連、アンリツ(6754)など5G関連も、米ハイテク株の上昇を支えに強い動きが目立ちました。
各国の自動車販売回復で月初には自動車関連株にも見直しが集まり、6月の既存店売上急回復で、月後半には小売りの一角にも買いが向かいました。半面、百貨店や観光関連、インバウンド関連などにはあらためて警戒感が強まりました。
決算発表前は業績安心感の強い銘柄に資金集中も?
仮に、今後も経済活動の回復が続いた場合でも、国境を越えた人の往来の正常化にはまだまだ時間が掛かるとみられ、コロナ前の経済状況まで回復するには時間を要するとみられます。
また、世界での新型コロナウイルス感染者数は依然として増加傾向をたどっており、今後は経済活動の再度の縮小も意識されてくる可能性があります。米中関係には依然として緊張感が残り、足元ではトランプ米大統領の支持率低下なども気がかり材料となってきています。
コロナショック前に接近している現在の株価水準から、さらに上値を買い進める動きなどは限定的になるものとみられます。
7月の下旬からは3月期決算企業の第1四半期決算発表がスタートします。このタイミングでは、多くの企業が通期業績見通しや配当計画などを開示することになるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中では従来以上に慎重な計画となる可能性も高く、あらためて業績への懸念やバリュエーションから見た株価水準の割高感が意識される公算も大きそうです。
とりわけ、新型コロナウイルスによる業績へのマイナス影響が大きいとみられる銘柄には、決算前の買い手控えも強まる見込みです。物色の二極化の流れはもう少し続くものと考えます。
情報通信関連セクターにおける出遅れ銘柄、短期的に新型コロナの影響が限定的とみられる医薬品、食料品、建設セクターなどに安心感は強いとみられます。
また、世界的な販売回復がみられる自動車関連株も、中国の政策変更によるハイブリッド車需要拡大期待を高めたいところです。
なお、ほとんどの産業において、第1四半期決算がボトムとなる可能性は高いと言え、発表前は買いにくいですが、仮に決算発表が一段安につながる銘柄などは、財務体質がぜい弱な銘柄を除いて、中長期的には絶好の買い場となるでしょう。
業績見通しを公表している銘柄に買い安心感が強まる
7月下旬には第1四半期決算発表が本格化します。通常の第1四半期決算と違って、今回はこのタイミングで通期業績見通しの公表がなされる銘柄が多くなると考えられます。より重要性は高まり、その分、業績見通しが厳しそうな銘柄には一層警戒感が強まりそうです。
特に、業績見通しの悪化がストレートに減配につながる銘柄も多くなりそうです。このため、少なくても決算発表前までは、すでに業績見通しを公表している銘柄に買い安心感が強まる見込みです。コロナ禍で見通しを示したことは、先行きへの自信の表れとも受け止められます。
今期の増益見通しを発表した高配当銘柄ランキング
下表は、今期の増益見通しを発表した3月期決算の高配当利回り銘柄となります。
総じて増益率は極めて低い予想ですが、これは悪環境の中で保守的に対外公表数値を掲げたものと考えられます。あくまで増益見通しに拘った点は評価すべきといえるでしょう。
ただ、注意したいのは、第1四半期決算時に上方修正するような可能性は低いとみられ、決算発表後は短期的に出尽くし感が強まる可能性もあります。今回はあくまで、決算発表前の選別物色候補と捉えたいところです。
2020年6月30日時点 増益見通し発表の高配当株ランキング
コード | 銘柄名 | 会社予想配当利回り | 6月30日終値 | 時価総額 | 予想営業増益率 |
---|---|---|---|---|---|
9434 | ソフトバンク | 6.25 | 1,375 | 65,823 | 0.9 |
5020 | ENEOSホールディングス | 5.76 | 382 | 12,340 | 黒転 |
5021 | コスモエネルギー | 5.10 | 1,570 | 1,331 | 148.3 |
4502 | 武田薬品工業 | 4.68 | 3,848 | 60,659 | 253.6 |
1861 | 熊谷組 | 4.65 | 2,580 | 1,208 | 0.2 |
9832 | オートバックスセブン | 4.42 | 1,358 | 1,141 | 0.2 |
9436 | 沖縄セルラー電話 | 3.73 | 4,125 | 1,128 | 0.2 |
配当利回り平均(%) | 4.94 | ||||
注:配当利回り、予想営業増益率の単位は%、時価総額の単位は億円、株価の単位は円。 |
銘柄選定の要件
(1) 予想配当利回りが3.5%以上(2020年6月30日終値ベース)
(2) 時価総額が1,000億円以上(同)
(3) 3月期本決算
(4) 2021年3月期営業利益が増益予想
1 ENEOSホールディングス(5020・東証1部)
▼どんな銘柄?
石油元売りの国内トップ企業で、国内シェアは約5割となっています。銅などの金属事業も手掛けています。原油相場の水準によって在庫の評価損益の変動が大きく、株価は原油相場との連動性が強い傾向があります。
配当利回り水準が高いだけでなく、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)でみても株価の割安感が強いといえる銘柄です。
2020年6月に、これまでのJXTGホールディングスから社名変更しています。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は1,131億円の赤字となりました。前期比では6,501億円の損益悪化となっています。
原油市況が月末にかけて大きく下落したため、在庫評価損が2,098億円発生し、赤字に転落しました。在庫影響を除いたベースでは967億円の黒字で、前期比81.2%減益となっています。
石油製品・石油化学製品のマージン悪化が大きく響きました。2021年3月期営業利益は1,100億円の黒字転換見通しで、在庫影響を除いたベースでは1,650億円、同70.6%増益の見通しです。石油製品のタイムラグ解消によるマージンの改善を見込んでいます。
▼ここがポイント
評価ポイントは、成長に向けた積極的な投資を行う一方で、株主還元も高水準を維持するなど、バランスの取れた財務戦略を進めていることです。株主還元としては、総還元性向50%以上、下限配当22円と設定しています。
また、今年の10月には大阪製油所の精製機能を停止する予定となっており、その後の石油製品の需給バランス改善も期待されます。
2 コスモエネルギー(5021・東証1部)
▼どんな銘柄?
石油元売り大手の一角で、国内シェアは11%程度とみられます。
アブダビ政府系の投資会社が筆頭株主となっている他、2017年2月より、キグナス石油と資本業務提携を行っています。石油開発事業なども手掛け、中東地域における日系企業のオペレーター会社としては最大規模のようです。原油生産量は約5.1万バレル/日です。
なお、風力発電能力も国内で第3位の規模となっています。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は139億円で前期比85.3%減益となりました。在庫評価損が522億円発生したことが大幅減益の主因ですが、ENEOSと同様に、原油価格急落に伴うマイナスのタイムラグ(製品販売価格の下落が先行)発生も響きました。
2021年3月期営業利益は345億円で同2.5倍の見通しです。在庫評価を除いたベースでは減益を見込んでいます。石油事業は前期のタイムラグ解消で大幅増益の見通しですが、資源価格の下落による石油開発事業の落ち込みを想定しています。
▼ここがポイント
会社側の原油価格前提は30ドル水準ですが、現在は40ドル程度での推移となっています。現状の傾向が続けば、資源開発事業の上振れが期待でき、全体業績も上方修正の可能性があるといえます。
また、再生可能エネルギー事業では、陸上風力のみならず、秋田港や能代港などにおける洋上風力発電の事業開始も2022年には開始予定となっています。
3 熊谷組(1861・東証1部)
▼どんな銘柄?
準大手ゼネコンの一角。民間建築の割合が約6割となっています。筆頭株主は住友林業となっており、共同でアジア地域における不動産開発事業に着手しています。
微生物を利用してCO2からエチレンを生産する技術を開発中、CO2排出量の削減効果に期待がかかります。前期まで連続しての増配を継続中でもあります。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は254億円で前期比3.9%減益となりました。完成工事高は増加しましたが、不採算工事の発生によって利益率が低下しました。
受注高は土木分野における鉄道分野での反動減、建築分野における医療・福祉施設、住宅の反動減などで同28.4%の減少となっています。
2021年3月期は豊富な受注残の順調な消化によって、売上高・利益ともに横ばいを予想しています。営業利益は255億円で同0.2%増益の見通しです。
▼ここがポイント
不採算案件の一巡、土木分野を中心とする引き渡し工事の増加に伴うマージン改善などから、会社側の収益計画はやや控えめと考えられます。
ここまで連続増配を実施しており、業績上振れは増配につながる可能性が高いことは注目されます。
ちなみに、前期の受注は減少していますが、前期末受注残高は5,431億円で売上高の1年分を優に超える水準があります。準大手ゼネコンの中では相対的にPER水準が割安であることも注目されます。
4 オートバックスセブン(9832・東証1部)
▼どんな銘柄?
国内最大手の自動車用品店です。カー用品の販売や取付・交換サービス、車検・整備などを提供するフランチャイズで運営しています。5月29日現在での国内店舗数は586店舗となっています。
また、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域を中心に海外事業の基盤強化を進めているほか、海外では新規ビジネスとして、小売店舗のほかに、商品の卸売事業も拡大させています。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は75.9億円で前期比1.4%増益となりました。タイヤは前年割れとなったものの、ドライブレコーダーなどが好調に推移しました。販促費などは増加した一方、海外事業やネット事業などの利益率改善で増益を確保しています。
2021年3月期は76億円で同0.2%増益の見通しです。新型コロナウイルスによる消費低迷などをマイナス要因としていますが、前年度の暖冬の反動による冬用タイヤの需要増などで小幅な増収増益の予想です。
▼ここがポイント
「あおり運転罪」を新設した改正道路交通法が6月30日に施行されています。これをきっかけに、一段とドライブレコーダーへの関心も高まる公算が大きいでしょう。
また、会社側の国内上半期既存店売上高前提は前年同期比10.7%減ですが、4月の前年同月比18.9%減に対して5月は同10.2%減まで落ち込みは縮小しています。想定よりも回復ペースは速まる可能性も高いといえるでしょう。
5 沖縄セルラー電話(9436・JASDAQ)
▼どんな銘柄?
KDDI(9433)を親会社とする通信会社です。沖縄県では5割と圧倒的なシェアを占めています。
「au」「UQ」のブランドで展開するモバイル事業、「auひかりちゅら」「ひかりゆいまーる」が中心のFTTH事業(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)、2019年11月からサービスを開始したauでんきを中心とするライフデザイン事業を手掛けています。
東シナ海ルートの「沖縄~九州海底ケーブル」が竣工し、2021年3月期には収益貢献する予定です。
▼業績見通し
2020年3月期営業利益は140億円で前期比7.9%増益となっています。
端末出荷台数は減少しましたが、モバイル事業における契約数の増加、FTTH事業における回線数の増加で、8期連続での増収増益を達成しています。
2021年3月期は140億円で同0.2%増益の見通しです。引き続き、モバイル契約数、FTTHの累計回線数、auでんきの契約件数増加を見込んでいます。
ただ、モバイル回線契約者1人当たりの売上高(ARPA)などの会社前提は保守的との見方もあるようです。
▼ここがポイント
株主還元の一段の強化が評価材料となります。会社側では配当性向40%を新たな配当政策に掲げ、2021年3月期年間配当金は154円で前期比9円増を計画しています。これで20期連続での増配となります。
また、発行済み株式数の2.2%に当たる60万株、20億円を上限とする自社株買いの実施を初めて発表しています。取得株式については消却予定としています。
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