4月20日
2か月半ぶりに預金準備率の追加引き下げ実施、香港相場の支援材料に
中国人民銀行(中央銀行)は4月19日に追加緩和に動き、預金準備率を1.0ポイント引き下げると発表した。これは2月5日に続く約2カ月半ぶりの準備率引き下げであり、1兆3000億-1兆4000億元規模の流動性供給につながる見込み。BOCIは明らかに市中の流動性改善に寄与するとみて、一段の株高を後押しする見通しを示した。今回の準備率引き下げのタイミングはほぼBOCIの予想通りだったが、1.0ポイントの引き下げ幅は予想以上。政府はこれにより、明らかに政策緩和のシグナルを発する形となった。BOCIは中国が利下げサイクル、預金準備率引き下げサイクルに入ったと受け止め、香港株式市場の先行きに対して楽観見通しを据え置いている。
景気下押し圧力が続く中、中国では預金準備率引き下げを含め、短期的にマネーサプライの伸びを支えるための刺激策の導入が不可欠となっている。マネーサプライM2の伸びは3月に前年同期比11.6%増と、2月の同12.5%増から減速した。大幅な外貨流出やオフバランスシート融資の急減が響く形となった。
BOCIは中国からの資本流出がベースマネーの委縮を招いたと指摘し、今回の準備率引き下げを後押ししたとみている。米国の量的緩和の終了や人民元為替制度改革による影響で、中国の「外国為替資金残高」(海外資金の流れを示す指標:人民銀行が国内に流入した外貨を買い取るために発行する人民元の通貨供給量を差す)は2014年12月に月間1184億元減少し、07年12月以来最大の落ち込みを記録した後、15年1月も同1083億元減。続く2月も同422億元の増加にとどまった。BOCIは向こう数カ月にわたり、中国への資本流入が低水準にとどまるか、あるいは流出傾向を示すとみている。
デフレ圧力が続く中、インフレ警戒感はすでに金融緩和の阻害要因ではなくなっている。最新物価統計では、3月のCPI(消費者物価指数)上昇率は前月並みの前年同月比1.4%。また、3月のCPIは前月比では0.5%低下し、1月、2月に同0.3%、同1.2%上向いた後、下落傾向に転じた。一方、生産者出荷価格指数(PEFPI)、生産者購入価格指数(PPPI)は3月に前年同月比4.6%、5.7%下落した。2月の下落率は同4.8%、5.9%だった。
BOCIは先進諸国の極端な低金利環境を理由に、人民銀行による緩和余力は依然大きいとの見方。景気減速圧力が続く中、中国政府はGDP成長率「前年比7.0%」以上を確保するため、準備率引き下げ、利下げを含む景気てこ入れを継続する可能性が高い。
中国が14年11月21日以降、2度の利下げと預金準備率の2度の引き下げを実施したことで、香港相場は過去6カ月にわたって急伸した。BOCIは準備率の追加引き下げによる恩恵を最も受けやすいセクターとして本土系の不動産デベロッパーと銀行を挙げ、証券および保険セクターにも金融緩和の恩恵が及ぶ見通しを示した。負債比率が高い電力セクター、素材セクターも、準備率引き下げの恩恵が相対的に大きいとしている。