8月22日
輸入牛乳の販売増による悪影響は軽微、オンライン販売強化で国内大手が優位に
中国の乳製品セクターではオンライン通販の普及に伴い、コストパフォーマンスに優れた輸入牛乳が優位に立つとの警戒感が出ているが、BOCIは「輸入牛乳に対する需要は都市部の“純粋な牛乳”の消費層に限られる」とみて、国内大手の先行きを楽観視している。年初からネット販売を強化しているA株上場銘柄の伊利股フン(600887)など、国内有力メーカーはブランド力、製品ラインの多様性、アフターサービスの充実度などで海外の競合ブランドに劣らず、ネット上でも存在感が高まる見通しを示している。
税関総署の統計では、中国の牛乳(液体)輸入量は13年に前年比92%増の19万4000トンに達し、金額ベースでも同91%増の16億7000万元を記録した。ただ、14年上期には輸入量が前年同期比46%増、輸入額が56%増と、前年の倍増ペースから減速。BOCIは国内の牛乳消費に占める輸入物の割合が0.8%にとどまるとし、輸入増による影響は限定的との見方。ちなみに、輸入牛乳の6割はネットを通じた販売で、販売量の7割を主要都市部が占めるという。小規模ブランドの乱立が輸入牛乳市場の特徴であり、大手5社のシェアは約5割にとどまる(国内ブランドでは大手3社のシェアが7-8割)。
BOCIはネット通販を通じた輸入牛乳の普及は限定的との見方であり、その理由として、◇物流面での制約、◇輸入物の製品種類が限られること、◇開封後は48時間後が消費期限になること――などの点を挙げている。まず物流面では、ネット牛乳販売がカバーしているエリアは都市部の25%程度。また、輸入物の製品種類はほぼ“純粋な牛乳”に限られ、その影響は相対的にシェアが小さい純牛乳市場だけに限定される。中国の乳製品市場および牛乳市場における純牛乳のシェアはそれぞれ約10%、約30%にとどまるという。さらに常温保存可能であっても開封後は冷蔵の上、通常48時間以内に消費しなければならず、この点で輸入物を敬遠する消費者もいるもよう。BOCIは輸入牛乳の市場シェアが10%を超えるケースは考えにくいとしている。
一方、大容量製品の購入が一般的な中国では、牛乳は短期間で賞味すべき製品ではなく、この点でオンライン販売向き。今後は製品の多様性やブランド力で強みを持つ国内大手がオンライン上で存在感を増すとみられ、その結果、ネット通販部門でも段階的に大手の寡占化が進む可能性が高い。B2C通販最大手Tmall.com(天猫)のデータを見ると、国内大手2社、伊利股フンおよび中国蒙牛乳業(02319)の売り上げは増加傾向にあり、今後は両社のシェア拡大とネット販売部門でのリーディングポジションの獲得が予想されるという。なお、BOCIは「赤ワインや粉ミルクのように国内ブランドが苦境に陥る可能性は低い」とし、その理由の一つとして海外市場のトレンドにも言及している。世界の粉ミルク消費に占める輸入物の割合は約20%に上るが、一般に液体牛乳は国産が主体。日本と韓国では、輸入牛乳のシェアはそれぞれ1%以下にとどまるという。