9月28日 「オーバーウエート」
データ収入の好調推移で収益伸び率加速へ、キャリア3社に強気見通し
BOCIは中国本土の通信キャリア3銘柄の目標株価を一斉に引き上げ、株価の先行きに対してそろって強気見通しを継続した。増収率およびEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)伸び率の加速に加え、中国経済の先行き不透明感が高まる中での安定的な収益見通しが理由。個別では、アジア太平洋市場の同業銘柄との比較において、チャイナ・モバイル(00941)、チャイナ・テレコム(00728)の上値余地が相対的に大きいとみている。両銘柄の現在株価の12年予想EV/EBITDA倍率は3.5倍、3.3倍と、EBITDAベースの比較においては世界の通信銘柄の中で最も低い水準にあるという。
中国工業・情報化部によれば、国内の通信サービス収入は7月に前年同月比12.6%増加した後、8月も同12.1%増と力強い伸びを維持した。固定通信部門の収入は2010年に前年比3%減少したが、11年上期には横ばい推移し、5月からプラス成長に転じた。音声通話収入の落ち込みをデータ収入の伸びがカバーする形となった。また、携帯電話部門の成長率は加速傾向を示し、8月には前年同月比14%増。低価格スマートフォン普及に伴うデータ収入の伸びが寄与した。
携帯電話、固定通信両部門におけるデータ利用の急拡大を背景に、通信サービスの潜在需要は旺盛。中国では低価格スマートフォンの普及やFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム:ファイバーによる家庭向けデータ通信サービス)ブロードバンドの普及も、今年ようやく幕を開けたばかりの段階にある。イネーブリングテクノロジー(実現技術)の貢献を理由に、2012年以降もデータ関連サービス収入が高い成長率を維持する見通しという。
通信業界では2008年に業界資産を再分配する大型再編が行われたが、08年以降のキャリア3社のシェアは、サービス収入、EBITDAの両面で極めて安定的に推移している。最大手チャイナ・モバイルの収入シェアは08年以来ほぼ一貫して56%の水準。BOCIはキャリア各社の販売管理費シェアとサービス収入シェアの相関関係を指摘した上で、販売管理費に関する2011-13年の予想に基づき、3社の収入シェアがこの先大きく変動する可能性は低いとみている。一方、3社のEBITDA伸び率については11年下期に前年同月比15.4%に加速すると予想。個別ではチャイナ・ユニコム(00762)が26%、モバイルが14%、テレコムが12%になると予測している。
一方、中国国内では番号ポータビリティ制度の導入やNational Cable Co.(国家ケーブルテレビ会社)の設立が先送りされているが、携帯電話加入者純増数に占めるチャイナ・モバイルのシェアが50%前後まで後退したことで、BOCIは番号ポータビリティ制度が導入される可能性は低いと見方。また、国家ケーブル事業者をめぐる計画の遅れは、特に固定通信部門に明らかにプラスになるとみている。