6月27日 H株「中立」、A株「中立」
引き締め政策下で流動性リスクが拡大、「変則利上げ」に警戒感

BOCIは7月中に一段の引き締め策が実施される可能性は低いとみて、本土系の銀行銘柄が6月中間決算を手掛かりに値上がりする可能性を指摘している。また、今年下期に預金準備率(RRR)の再引き上げが行われる余地は限られるとしながらも、中長期的観点ではインフレ圧力下で利上げが行われる可能性が高いとの見方。引き締め環境が銀行銘柄の資金コストの増大を招き、流動性の低下圧力につながるとの懸念を示した。信用引き締めが銀行資産の質的悪化に対する警戒感をあおる可能性にも言及し、銀行セクターに対する中立的な見方を継続している。

中国人民銀行(中央銀行)は年初から6回にわたり、市中銀行のRRRを引き上げた。これにより、大手行のRRRは18.5%から21.5%(中小行は19.5%)に上昇した。これで総額1兆9700億元の市中資金が吸い上げられたことになるが、外国為替資金残高(中央銀行が国内に流入した外貨を買い取るために発行する人民元の通貨供給量を指す)はこの間に2兆1100億元増大した。マネーサプライ(M2)の伸びは5月下旬に前年同期比15.1%。名目GDP成長率が15%であることを考慮すれば、マネーサプライは引き続きかなりタイトとなっているが、BOCIはこの先も外国為替資金残高の伸びが続いた場合、RRRがさらに約1%の幅で引き上げられる可能性があるとみている。

また、引き締め政策下で、流動性に関する構造上の問題が顕在化する可能性も指摘されている。本土系の銀行銘柄は全般に債務期間が短い半面、資産存続期間が長く、個別銀行に目を向けた場合、預金流出に対する抵抗力がさほど高いとはいえないという。BOCIは銀行システム全般における流動性リスクは低いとしながらも、こうした構造問題が各行の資金コストの増大を招く見通しを示している。

銀行融資の総量規制の緩和が見込まれる半面、中央銀行はインフレ環境下で利上げに踏み切る可能性が高い。銀行預金の流出が加速していることも、利上げの必要性を一段と高めている要因の一つ。BOCIは預金金利の引き上げ幅を貸出金利より大幅に設定する、いわゆる「変則利上げ」を警戒しており、仮に変則利上げが実施された場合、銀行銘柄の純利ざや(NIM)が0.8ベーシスポイント低下すると予想。その結果、2011年の純利益が0.4%目減りするとの試算結果を示した。

BOCIは預金獲得面で優位性を持つ銀行銘柄の流動性リスクが相対的に小さく、資金コストの上昇圧力も低いと指摘。個別では招商銀行(03968)、中国農業銀行(01288)を選好している。また、中国工商銀行(01398)にとっては現在の引き締め環境がプラスに作用するとの見方。一方、中国民生銀行(01988)に関しては、零細企業向け融資の奨励措置が追い風になるとみて、6月中間期に相対的に高い利益成長を達成すると予想している。