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欧米のリスクイベントはアク抜けか(香川睦)
香川 睦
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

欧米のリスクイベントはアク抜けか(香川睦)

2017/3/17
欧米市場は、15日に集中した注目イベントの結果が想定された範囲内だったことでやや安堵。オランダ総選挙にも波乱はなく、反EUを唱える自由党の獲得議席数は伸び悩んだ。
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執筆:香川睦

今日のポイント

  • 欧米市場は、15日に集中した注目イベントの結果が想定された範囲内だったことでやや安堵。オランダ総選挙にも波乱はなく、反EUを唱える自由党の獲得議席数は伸び悩んだ。
  • FRBによる追加利上げは「金融引き締め」と言うより「金融政策の正常化プロセス」とみたい。
    米景気改善を背景に金利が緩やかに上昇するなか、「業績相場」は暫く続くと見込む。
  • 前回の利上げ局面(2004年6月~2006年6月)でも、当時の「歴史的低水準」だった超低金利から脱する過程では、日米株式が底堅いパフォーマンスを示した経緯がある。

(1)週央に集中した注目材料の結果に安堵

欧米の株式市場は、「トリプルウィッチングデー(3人の魔女の日)」とも称された3月15日を乗り越えた感があります。警戒されていた米FOMC(連邦公開市場委員会)やオランダ総選挙は想定された範囲内の結果に終わり、株式は「イベント通過による安堵感」で上昇しました。FRB(米連邦準備制度理事会)は、市場がほぼ織り込んでいた追加利上げを決定しましたが、FOMCメンバーの金利見通し(平均)に大きな変更がなかったため米債利回りは低下し、日米金利差拡大観測がやや後退。為替でドル円が弱含んだことが日本株式の重石となっています。一方、オランダ総選挙(下院)では、反イスラム・反EU(欧州連合)を標榜する自由党(ウィルダース党首)の獲得議席数が20議席と伸び悩み、ルッテ首相が率いる与党・自由民主党が33議席を獲得しつつあります(日本時間16日23時/CNBC報道)。直前の世論調査でも極右勢力である自由党の劣勢は予想されていましたが、通貨ユーロはEU残留を主張する与党の勝利を受け堅調となりました。4月のフランス大統領選挙を視野に入れた「欧州政治不安」の緩和は、世界株式の下支え要因と考えられます。

図表1:米国金利と日米の株価動向

(出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2017年3月16日))

(2)米経済の改善が金融政策正常化の背景

イエレンFRB議長は、15日のFOMC後の記者会見で「米国民へのメッセージ」を問われ、「The simple message is the economy is doing well」(シンプルに言えば米国経済は順調です)と答えました。換言すると、今回決定された追加利上げは、「異常事態」とも言われた超低金利(ゼロ金利)政策からの脱却を目指す「金融政策の正常化」プロセスと考えられます。そして、利上げペースを巡るFOMCメンバーのコンセンサス(平均的見方)が「年3回程度」と前回見通しと変わらなかったことを好材料視し、15日の米国株式は上昇しました。図表2は、米労働省が発表する非農業雇用者総数と賃金上昇率(時間当り賃金の前年同月比伸び)を示したものです。2008年9月の「リーマンショック」(金融危機)を発端とした景気後退で、非農業雇用者数が約800万人削減された(失業率は2009年10月に10%まで上昇した)なか、金融当局は超低金利政策と量的緩和政策を導入しました。結果として、その後の景気持ち直しに沿って約800万人の雇用を取り戻した2014年に金融当局は量的緩和策を停止。さらに約800万人雇用が増えた(リーマンショック後の底(ボトム)からは総計で約1,600万人雇用が増加した)なか、2015年12月に利上げを開始しました。雇用情勢の改善は労働需給を逼迫させ、賃金上昇率は徐々に上昇傾向を辿りましたが、2016年は外部環境の不透明要因と株安などで、12月まで利上げを実施できなかった経緯があります。米国の緩やかな利上げ再開は、米国景気の改善傾向に加え、世界経済の安定を追い風とする金融政策の正常化プロセスと考えています。今後も、年3回程度(0.25%づつ)のペースで追加利上げが実施されていく可能性が高いと見込んでいます。

図表2:米国の雇用情勢と賃金上昇率

(出所:Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2017年2月時点))

(3)利上げ局面での日米株式動向(市場実績)

それでは、米国の利上げサイクルを受けた日米株式市場の行方をどう考えたらよいでしょうか。米国株の堅調と日本株の底堅さを支えているのは、米国を中心に世界景気が回復している現状に、トランプ政権による財政出動期待が加わることによる「業績拡大期待」と考えています。図表3は、米国の前回利上げ局面(2004年6月から2006年6月まで)の政策金利と日米株式(S&P500指数とTOPIX)のパフォーマンスを振り返ったものです。FRBが2004年6月末を起点に17回に及ぶ利上げを実施しましたが、S&P500指数は11.3%上昇し、TOPIXは同期間に33.4%上昇(04年6月末から06年6月末までの2年間)して底堅い動きをみせました。当時も、利上げ開始前の政策金利(誘導目標)は歴史的低水準(1.00%)で、景気回復に伴う利上げは「金融政策の正常化」に向けた動きとも言えました。「利上げができるほど経済状況が良くなってきた」、「小刻みに利上げを実施することでインフレ圧力と長期金利上昇を抑え、景気を安定化させる」との見方が広がったことも株高要因となりました。今回も、政策金利はいまだ1.0%を下回っており、追加利上げ実施後も長期金利(10年国債利回り)が歴史的低位にある実勢に変わりありません。FRBが早晩追加利上げを実施するにしても、今回FOMCメンバーが平均的に示唆した「中立的な金利水準(3.0%)」程度までの利上げは想定し得る状況と考えます。一方、S&P500指数ベースの2017年業績予想(予想EPS平均)は前年比18.2%増益、TOPIXの2017年業績予想は同18.9%増益とそれぞれ最高益を更新する見通しです(Bloomberg集計による市場予想平均)。株式市場は、低金利環境下の「金融相場(金融緩和を好感する相場)」から、「業績相場(業績拡大を期待する相場)」に移行しつつあると考えています。

図表3:米国の利上げと日米株価の推移(2004年から06年の市場実績例)

(出所: Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2004年~2007年)

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