執筆:香川睦

今日のポイント

  • TOPIXは、100日と200日の移動平均線が「ゴールデンクロス」を形成し強気相場を確認。ただ、対200日移動平均線乖離率が14%まで上昇し目先はスピード調整を想定。
  • 世界株とドル円の同時上昇が相場切り返しの背景。新年も米国を筆頭に世界景況感の改善と米ドル金利上昇を介した円安の進行度合いが日本株一段高への鍵となろう。
  • TOPIXの第1の上値目途として2015年8月高値(1,691)を、第2の上値目途として2007年2月高値(1,816)を想定。日経平均ではそれぞれ21,300円、22,900円が視野に入る。

(1)TOPIXは強気相場を確認、目先はスピード調整も

TOPIX(東証株価指数)は、東証上場の幅広い銘柄(1980銘柄)を時価総額で加重平均した株価指数で、日経平均(225銘柄の修正株価平均)よりも国内株式全体の動向を反映する指数とされています。TOPIXは、11月下旬に100日移動平均線が200日移動平均線を下から上に突き抜けるゴールデンクロスを形成し強気相場入りを確認しました(図表1)。2015年11月中旬に弱気相場入りを予兆したデッドクロス(100日移動平均線が200日移動平均線を上から下に突き抜けた)局面と真逆の動きです。とは言うものの、200日移動平均線に対する乖離率が先週+14%に達し、スピード調整入りしやすい状況ではあります。過去10年の乖離率の「平均±σ(標準偏差)」は「-12.5%~+12.0%」でしたので、短期的な過熱感は否めません。ただ、2012年末以降のアベノミクス相場では、同様のゴールデンクロスが13年1月に示現し、対200日移動平均線乖離率は+44%に上昇しました。やや気が早いですが、2017年を通じての強気相場を「初夢」(?)と呼ばせていただきたいと思います。

図表1:TOPIXと200日移動平均線に対する乖離率

(注) σ(標準偏差)=平均からのバラ付き度合いを示す。統計学的に「平均±1σ」の範囲に収まる確率が約7割とされる。
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年12月28日)

(2)世界株式とドル円の堅調持続が鍵(かぎ)

国内株式は、世界の景気動向を映す海外株式(日本を除く)とドル円相場の変動から大きな影響を受ける特徴があります。図表2は、日本を除く世界株式の動きを示すMSCIコクサイ指数、ドル円、TOPIXの推移を示したものです。世界株式は、2015年央からの軟調から脱して12月は最高値を更新。ドル円も反転上昇したことが、TOPIXの回復を促してきたことがわかります。MSCIコクサイ指数とTOPIXは、09年春に同様の水準で底入れしましたが、その後の回復度の差(TOPIXの劣後)は為替の円高傾向でほぼ説明ができそうです。

2012年末に始まったアベノミクス相場では、世界株式が09年来の高値を更新したなか、ドル円が急反発した(円安に転じた)経緯が確認できます。逆に、15年央から16年初までは、世界株式もドル安も下落に転じ、ダブルでTOPIXに下方圧力となりました。そして16年後半(下期)は一転。世界株式が回復するなか、ドル円が反発し、TOPIXは強気相場入りしました。こうした基調を受け継ぐなら、新年にTOPIXが2015年8月の高値(1691.29)をとらえ、2007年2月の高値(1816.97)を目指す展開も期待できそうです。2017年は、米国を筆頭に世界の景気感が改善を続け、トランプ新大統領の経済政策が米金利を押し上げ(日米金利差は拡大)、円安と日本株高が続くと見込んでいます。

図表2:世界株式、ドル円、TOPIXの長期推移

(注)世界株=日本を除く世界株式指数<MSCI Kokusai Index (Excluding Japan/Local Currency)>
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年12月28日)

(3)業績とバリュエーションから試算する上値目途

図表3は、TOPIXの週次に26週移動平均線と52週移動平均線を重ねたものです。12月16日に26週移動平均線が52週移動平均線を下から上に突き抜けてゴールデンクロスを形成し、今般の強気相場を確認しました。一方、業績トレンドやバリュエーション面からも上向きの株価トレンドを予想させる要因があります。TOPIXベースのEPS(1株当り利益)は、2014年以降2016年まで3年連続で最高益を更新する見込み(市場予想平均)です。

本邦企業の経営努力、合理化、自社株買いなどの効果でボトムライン(EPS)が拡大し続けている点に注目です。2017年のEPSは106.15が見込まれており、予想増益率は前年比10.9%増益と見込まれています(市場予想平均)。17年予想EPSを前提とするPER(株価収益率)は約14.5倍に留まり、歴史的にも国際的にも比較的割安な水準に留まっています。

なお、現時点の2016年予想PER(約16倍)と2017年の予想EPSを掛け合わせると、TOPIXの参考目標値として1,698(=16×106.15)程度が浮上します。これは、2015年8月の高値(1,691)を上抜けるイメージです。 さらに、2017年の業績見通しが上振れる可能性、市場センチメント改善で許容PERが拡大する可能性、17年後半には2018年の予想EPS(現時点で114.52=前年比7.9%増益)が視野に入ってくる可能性を考慮すれば、2017年中にTOPIXが07年2月に付けた高値(1,816.97)を奪回する可能性も期待できそうです。

図表3:TOPIXの業績動向と市場予想

(注)TOPIXベースのEPS(1株当り利益)の実績と市場予想平均は、Bloombergによる調査及び集計
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年12月28日)

12月22日付けレポート「新年に警戒したいABCDEリスク」で解説した通り、2017年もリスク材料の進展次第で内外株式が波乱含みとなる可能性に注意が必要です。ただ、こうした波乱がグローバルグロース(世界経済の成長)や為替の円安傾向を毀損する事態に至らないなら、TOPIXが第1目標(1,691)や第2目標(1,816)を目指していく動きは想定できます。参考までに、第1目標への上昇率を日経平均にあてはめると21,300円程度、第2目標への上昇率で換算すると22,900円程度が視野に入ります。ただ、悪材料の顕在化(内外株式の下落やリスク回避による為替の反転円高)によっては、日経平均が17,000円程度まで下落する可能性もリスクシナリオとして視野に入れておきたいと思います。トランプ大統領への期待が先行しそうな年前半は高く、年後半は政治・経済を巡る不安で株価が伸び悩む可能性があります。物色としては、2016年7月からバリュー指数(TOPIXでPBRが比較的低い銘柄群)がグロース指数(TOPIXでPBRが比較的高い銘柄群)より優勢に推移している動きに注目したいと思います(図表4)。バリュー指数に含まれる主要業種としては、銀行(金融)、エネルギー、素材、資本財など時価総額が比較的大きい景気敏感銘柄群が挙げられます。これらは、17年以降に想定される投資環境から恩恵を受けやすい業種として選好されています。米財政政策が世界経済の成長期待を押し上げていく状況となれば、新年相場を巡る「初夢(メインシナリオ)」が「正夢(現実)」となっていく可能性が高いと考えています。 

図表4:バリュー株とグロース株の相対推移

(注)TOPIXバリュー指数=PBR(株価純資産倍率)が比較低い銘柄群、TOPIXグロース指数=PBRが比較的高い銘柄群
(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2016年12月28日)