10日の日経平均は、470円(2.5%)安の18,299円でした。①日本の景気・企業業績のゆるやかな回復が続くと予想すること、②日経平均はPER(株価収益率)14倍台に売られており割安なこと、③今後、強引な売り崩しは減少すると予想されることから、日本株は良い買い場を迎えていると判断しています。

(1)10日の日経平均急落の理由

9日発表のアメリカの景気指標が好調で、早期利上げ懸念が復活したことを嫌気し、10日も外国人投資家による日経平均先物の売りが続いたと考えられます。今、世界株安を招いている弱材料は、2つあります。

  • 中国経済が悪化していることへの不安
  • 米国経済が好調で、FRBが早期利上げに動く可能性が出てきたことへの不安

中国経済が良くないこと、米国経済が良いこと、両方とも、今の株式市場は、悪材料と捉えています。ただし、こうした何でも悪い方に解釈する相場は、いつまでも続かないと思います。

米景気が良好であることは、本来は好材料です。中国景気が減速しても、米国がしっかりしている限り、世界的な景気悪化にはつながらないでしょう。米国と経済的なつながりが深い日本の企業業績にも好影響を及ぼします。

(2)アメリカの金利上昇懸念はいずれ後退へ

米FRBが利上げを実施しそうであることに、世界の金融市場が警戒心を強めています。早ければ、9月16・17日のFOMC(米国の金融政策決定会合)で、0.25%程度、FF金利の引き上げが実施されるかもしれません。ただし、私は、さすがに世界の金融市場が不安定さを増し、世界中からアメリカに利上げをやらないように要望が集まっている今、利上げ強行はしないと思います。

ただし、世界の金融市場の混乱がある程度収束すれば、10月27・28日のFOMCで利上げを実施する可能性は残ります。私は、10月にFRBがFF金利の誘導水準を0-0.25%から、0.25-0.5%へ引き上げる可能性は十分あると思っています。0.25%の金利引き上げが、世界の金融市場に与える影響は、限定的だと思います。問題は、利上げ後にFRBが出すメッセージです。「利上げを続ける環境にない」ことを明言し、また先行きのFF金利見通しを大幅に引き下げれば、利上げ後に、かえってドル金利上昇への恐怖が薄れ、欧米株式市場の上昇につながる可能性もあります。

(3)外国人投資家の売り崩しは減少すると予想

株は、短期は需給、長期はファンダメンタル(景気・企業業績)で動きます。8月10日~9月4日にかけて、日経平均は主に外国人投資家の強引な売りで、急落しました。日本の景気・企業業績の回復がやや想定より鈍くなりそうですが、それでも回復トレンドは変わらないと見ています。日本株は、ファンダメンタルが大きく変わらない中で、需給要因から急落したので、割安になったと判断しています。外国人の売りが止まれば、急反発が見込まれます。

日本株の投資主体別売買動向(売買代金差額):2015年8月10日~9月4日

(単位:億円)

投資主体 8月10-14日 8月17-21日 8月24-28日 8月31-9月4日 合計
外国人 ▲ 2,987 ▲ 3,896 ▲ 7,264 ▲ 4,728 ▲ 18,875
個人 570 3,229 4,589 3,326 11,714
信託銀行 1,091 ▲ 100 2,603 2,512 6,106
事業法人 907 1,610 220 28 2,765
投資信託 100 0 1,475 304 1,879
生・損保 20 53 139 44 256
都・地銀 ▲ 8 76 ▲ 8 41 101
株価指数 8月10-14日 8月17-21日 8月24-28日 8月31-9月4日 合計
日経平均 ▲205円 ▲1,083円 ▲299円 ▲1,344円 ▲2,931円

(出所:日本取引所グループ、▲は売り越しを表す)

8月10日~9月4日まで、日経平均は合計2,931円下落しました。株式現物の売買で見ると、この間、外国人投資家が1兆8875億円売り越して、下げを主導しました。これに対し、国内投資家は、買い越しです。最大の買い手は、個人投資家で1兆1714億円の買い越しでした。次いで、信託銀行(主に公的年金)が6106億円、事業法人が2765億円、投資信託が1879億円と、国内投資家が一斉に買いに動いています。

外国人投資家は、売る時は下値を叩いて売り、買う時は上値を追って買ってくる傾向があります。したがって、短期的には外国人投資家が買い越している週は、日経平均が上昇し、外国人が売り越している週は、日経平均が下落する傾向があります。ただ、外国人の売り需要もそろそろ一巡するタイミングと考えています。外国人売りが一巡すれば、国内投資家の買いで日経平均が上昇に向かうと考えています。